怯むアミリの表情。
身体は心持ち、後ろに逃げるように反っている。


「なかなか止まないな。」
「あ、そ、そうですね……。止み、ませんね。」
「まぁ、どのみち服が乾くまでは帰れんだろうがな。」


俺の一言に、微妙に表情を曇らせるアミリ。
どう受け答えして良いのか、困っているという風に。
そうだな、ここはもっと彼女を困らせてやろうか……。


「どうだ、俺の服の着心地は?」
「は、はぁ……。」


くくっ、困ってるな。
気持ち頬を赤く染めて。
どうも、そんな顔をされると止められそうになくなる。
俺は更に顔を近付け、戸惑うアミリに向かってニヤリと笑ってみせた。


「なら、俺の下着の着け心地は、どうだ?」
「っ?!」


一気に真っ赤に変わる頬。
その隙を点いて、俺はアミリの背後の背もたれに掛けていた腕を、彼女の肩へと移動させて、グッと抱き寄せた。


「か、カノン様っ?!」
「何だ?」
「あの……。もう、帰りますから……。」
「まだ降ってるのにか?」
「でも……。」


俺の腕の中で、小さくなって俯くアミリ。
少し困らせ過ぎたか?
そう思った俺は、肩に回していた腕をずらして、まだ半乾きの髪をそっと撫でてやる。


「安心しろ。その下着は新品だ。俺はまだ一度も着けてない。」
「は、はぁ……。」


女っ気のないこの宮には、勿論、女性用の着替えなどある筈もなく。
服は俺のシャツで何とかしたが、下着はどうするか。
上は兎も角、下に何も履かないという訳にもいかない。
仕方がないので、俺の下着を貸してやった。
当たり前に、新品の物を。


「着替え、早く乾けば良いのだがな。こんな姿、アイオリアにでも見られたら大変だろう?」
「え? どうして、アイオリア様が?」
「は? だってお前、アイツの事が好きなのだろう?」
「いえ、別にそういう事は……。」


一体、何を言っているのだろう?
そういった感じで、キョトンと俺を見ているアミリ。
その表情で気付く。
彼女がアイオリアを好きだと思っていたのは、俺の勝手な思い込みだった、と。
その瞬間、パッと希望が開けたのだと知った俺は、再びアミリの肩へと腕を回し、強く引き寄せていた。


「か、カノン様っ?!」
「何だ?」


あからさまに焦って、逃れようと身を反らすアミリ。
だが、決意を固めた俺は、もう彼女を逃す気はサラサラなかった。





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