リビングのソファーの上、所在無さ気に座るアミリ。
会話のない静かな空間に、一向に降り止まない雨音ばかりが響いている。
首を横に傾けた彼女は、ジッと窓の外だけを見ていた。
きっと早く降り止んで欲しいと、そればかり思っているのだろう。


俺とアミリは元々、あまり会話を交わした記憶がない。
どういう訳か、彼女は俺にあまり近付かないし、時には俺を避けているのではないかと思われる節もあって。
ミロやカミュなど同い年のヤツ等の傍にいる事が多く、きっとその方が気心が知れて接しやすいのだろうと思っていた。
特に、アイオリアとアミリが一緒にいるのを良く見掛ける。
多分、彼女はアイオリアの事が好きなのだ。
今、こうして窓の外を見ながら、二つ先の宮に心が飛んでいるのだろうアミリの横顔を、俺はぼんやりと見つめた。


「寒くないか?」
「……え? あ、いいえ。大丈夫です。」
 

何気なく話し掛けた一言。
そして、それは続く事もなく、再び訪れる沈黙。


アミリは俺の白いシャツを、着替えの代わりに着ていた。
華奢で、どちらかと言えば小柄な彼女が着ると、半袖でも五分袖以上の長さになる。
長過ぎる袖をクルクルと捲くって、だが、広い袖口は彼女の細い腕の優に二倍はあった。
長い丈は、膝までスッポリ隠してはいたものの、足や腕、襟元から見える首筋など、風呂上りで赤く火照った身体が妙に色っぽく見える。
化粧を全て落とした顔も、いつものようにキリッと出来上がった表情より、ずっと好ましい。


そうか、あれだな。
こうして普段の姿を思わせるような、どこか隙がある様子の方が、男にとってはそそられる。
言い方は悪いが、こういう状況に置かれて、前々から感じていた興味が、一気に大きく膨らんだと言って良い。
アイオリアと一緒にいるアミリの姿を見る度にイラッとしていた、その感情の正体が今、やっと分かった。
そう、あれは『嫉妬』だったのだ。


気付いてしまえば、抑えるなんて俺の性分ではない。
これは偶然にも俺に与えられた好機。
ならば、それを最大限に活用するのが男ってものじゃないのか。


「アミリ。」
「はい、何ですか、カノンさ――、って、うわっ! いつの間に、そんな近くに?」


アミリが窓の外を見ている間に、俺は彼女の隣に移動していた。
振り返ったアミリは、真横の至近距離に俺の顔を見て、驚きを隠せないでいる。
気付かないで当たり前だな、気配を絶って移動したのだから。
俺はソファーの背に掛けていた腕を、アミリの後ろ側へと滑らせ、更に距離を詰めた。





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