「ミギャッ! ミギャー!」
「何か……、シュラが超怒ってるみたいだけど?」
「嫉妬だろうな。アンヌがアイオリアを抱っこしてるから。」


嫉妬も何も、悪いのは自分なのですから、そんな高い場所で踏ん反り返ったまま怒ってないで、こちらに下りてくれば良いのです。
言いたい事があれば、堂々と言えば良いのです。
とはいえ、猫語しか喋れないですけどね。
何を言っているのか理解出来ないですけどね。


「ミャー! ミギャー!」
「お〜い、シュラ。そんなトコで怒ってないで、下りてきたらどうだ?」
「ミギャッ!」
「卑怯だろ、手の届かない場所から文句を言うのは。」


見かねたアイオロス様が、渡し板の上のシュラ様を見上げながら声を掛けるが、怒り声を上げ続ける黒猫ちゃんは聞く耳など持たず。
毛を逆立て、尻尾をピンと立ち上げて威嚇の姿勢を崩す気はないらしい。


「仕方ないなぁ……、よっと。」
「ッ?! ミギャッ?!」
「わ、落ちるっ!」


流石は黄金聖闘士。
一般人なら男性でもジャンプ程度じゃ届かない十二宮の天井。
その天井に程近い位置に設置されている渡し板まで、アイオロス様は軽々と飛び上がったのだ。
そして、まるでバレーボールのブロックでもするかの如く、上に伸ばした指先で、小さなシュラ様の身体をトンと押し遣った。


「よしっ! 捕まえたぞ!」
「ミャッ?!」
「ミロ様、ナイスキャッチです。」


板から真っ逆さまに落ちたシュラ様は、先程のアイオリア様と同様、ミロ様がガッチリとキャッチしてくれた。
良かった……、そのまま床に激突しちゃうんじゃないかと思ってしまった。


「さて……。シュラ、ココに座ろうか?」
「ミミャッ?!」
「アンヌはアイオリアを、前に座らせて。」
「あ……、は、はい。」


ミロ様の腕の中から、シュラ様の首根っこをムンズと掴んで、床へと座らせたアイオロス様。
彼の指示に従い、それと向かい合わせになるように、その前に屈んだ私は、そっとアイオリア様を床に降ろした。


「ほら、ちゃんとアイオリアに謝れよ、シュラ。」
「ミミャッ。」


ブンブンと左右に首を振るシュラ様。
何て強情なのだろう、まるで小さな子供のようだ。


「猫になって悪戯心が増したのか知らんが、アイオリアに怖い思いをさせたんだから、謝らずに済む話じゃないのは、自分でも分かってるだろう。」
「ミャミャッ。」
「ほら、頭下げて。」


諭すようにシュラ様に言い聞かせるアイオロス様は、慣れているというか何というか。
でも、猫ちゃんの小さな頭を、力尽くで床に押し付けるのはどうかと思いますけれど……。


「アイオロス様、随分と慣れているように見えます。」
「そりゃあ、慣れてるだろな。俺等が子供の頃なんて、いっつもこんな光景が繰り広げられてたんだし。」
「お前とアイオリアの喧嘩が、一番多かったなぁ。ミロもアイオリアも負けん気が強いから。」
「デスマスク様は?」


問題児のイメージが強いデスマスク様。
シュラ様とアレコレと喧嘩しそうだし、アフロディーテ様ともアレコレと言い合いを繰り広げそうだし。


「いや、デスマスクはアレで結構、手が掛からない子供だったから。口も態度も悪いけど、自分の事は自分で出来るし、周りを良く見てるからな、アイツ。」
「あー、何となく分かるな、それ。」


つまりは、中身が大人な冷めている子供だったと。
デスマスク様らしいと言えば、デスマスクらしい。
逆に、見た目が冷めている感じのシュラ様の方が、余程、子供だったと。
私はグリグリと頭を床に押し付けられてギリギリと歯軋りを上げる猫シュラ様を見遣り、漏れ出る溜息を堪えたのだった。





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