それで、デスマスク様にアイオリア様を任せたのは良いものの、アイオロス様本人は何処へ消えてしまったのでしょうか?


「原因を突き止めてくる、とか何とか言って、上に走り去ってったからな。今頃、アフロディーテのトコで、押し問答でもしてンじゃねぇか。」
「確かに、一番怪しいのはアフロディーテ様ですけれど……。」


だからといって、必ずしも彼が原因であるとは限らない。
アイオリア様はどうか分からないけれど、シュラ様は昨日からアフロディーテ様に会っていない筈だし。
例え私の知らないところで二人が顔を合わせていたとしても、こうも効き目が遅いのは変だ。


「アフロディーテ様と決め付けるには、決め手に欠けるかと。」
「俺もそう思うわ。確か、アイオリアも昨日は、どっかに任務に出てた筈だし……。」


――ぐうぅぅぅ……。


「す、すみませんっ。」
「凄ぇ腹の音だな、おい。」
「ミャー。」
「ミイッ。」


そういえば、まだ朝食を食べていなかった。
このような有り得ない出来事に振り回され、すっかり食事の事を忘れてしまっていた。
どうやらお腹が空いているのは私だけでなく、二匹の猫ちゃん達も同じようで、ソファーの上から物欲しげな視線が送られてくる。


「デスマスク様。もう朝御飯、食べましたか?」
「いいや、まだだ。」
「じゃあ、今から急いで用意するので、一緒にどうですか?」
「イイけどよ……。オマエが俺を誘うなンて珍しいじゃねぇか、アンヌ。なンか裏でもあンのか?」


まぁ、有ると言えば有るんですけどね。
デスマスク様が居てくれれば、食事の用意している間に、猫ちゃん達を部屋の中で野放しにする危険がなくなる。
面倒を見てくれる(寧ろ、見張りと言う方が正しい)人がいるというのは、何より安心だ。


「なる程な。そういう事なら、ちょっと待ってろ。」
「……はい?」
「数分だ。直ぐに戻ってくる。」


私の返事を聞かぬまま、デスマスク様は部屋を出ていった。
残された私はポカンとしたまま、ドアの方を眺めるしかない。
呆然としていた私の手に、猫ちゃん達が顔をスリスリと擦り付けてくる。
ううっ、これはまるで両手に花、いや、両手に猫ちゃん。
などと浸っている間に、部屋の中をウロウロと歩き回っていたカプリコちゃんも近寄ってきて、ソファーの前で膝立ちしていた私の足に、スリスリと擦り寄ってきた。
あぁ、何でしょう、この至福の時間、この天国は……。


「おい、コラ。一人勝手に恍惚の世界にハマり込ンでンじゃねぇぞ、アンヌ。」
「わっ?! は、早かったですね、デスマスク様!」


出て行ってから、五分と経っていない。
流石は黄金聖闘士、磨羯宮と巨蟹宮の間の往復も、僅か数分で済んでしまうのだ。
その両手に、大きな荷物を抱えていたとしても。


「何ですか、それは?」
「これは猫缶、ウチの猫のだ。ソイツ等も腹減ってンだろ。あと、これは猫の砂、トイレ用な。オマエが飯作ってる間に、そこらに設置しとくわ。」
「それは有り難いです。で、そっちの巨大な荷物は?」
「これは後のお楽しみだ。」


そう言って、何故か私を部屋からキッチンへと追い遣ろうとするデスマスク様。
当然、抵抗など出来ない強さなので、ズルズルと背を押されて行くしかないのだが、そういう言い方をされると、返って気になってしまうのが人間というもの。
名残惜しげに背後を振り返り、部屋の中の猫ちゃんに視線を送る。
ソファーの上には、大きな欠伸を漏らして伏せるカプリコちゃん。
それとは反対に、二匹でじゃれ合いながら部屋を走り回り始めたシュラ様とアイオリア様が、どうか部屋を荒らしませんようにと願いながら、私はキッチンへと籠もったのだった。





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