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@ Who killed Cock Robin?
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楓がくるくると落ちる。
敷き詰めたような木葉が足許を彩っていた。

「酒でも持ってくるんだったな」

一人ごちて、踏み締めた落葉の感触を愉しみながら回転する葉を眺めていた。
今頃、城では姿を消した城主に騒然としているだろう。
脱走など、子供じみた行為だと判っているがやめられない。そのうちに自身の右目が厳めしい顔で捜しにくる。捕まれば小言をもらう。それまでの鬼事だ。
追って来るから逃げたくなるのだ。逃げ切るつもりなど端から無いのに。
どこかで烏が鳴いた。
山中なのだから野鳥ぐらいいるだろうと聞き流していると、頭上で枝が折れるような音がした。
咄嗟に避けると目の前に人が落ちて来た。その男の手には苦無と、手裏剣にしては大きな刃。
胡乱過ぎる男を叩き伏せようと刀を抜いたが防がれた。

「…!」

腕はいい。
もう一度、振るおうとした瞬間、男は背を向けた。

「!?」

刀を振り下ろす間際、周囲の枝から黒い影が幾つか躍り出た。
瞬きの間に、背を向けた男の両手から武器が放たれ影を貫く。

「い…てぇッ」

膝をつき、男は呻くがすぐに立ち上がった。

「何だ、追われてんのか?」
「追われてた、んだよ」

しっかりとした足取りで、地に落ちて動かなくなった影の喉に暗器の刃を立てて止めをさしていく。

「…平気か?」

平気なわけはない。
止めるのも間に合わず、加減せずに斬ってしまった。今の間に男の背は真っ赤に染まっていた。

「訊くな馬鹿」

盛大に舌打ちして、男は追い払うように手を振った。当人がそう言うなら放っておいてもよかった。
刀の血を払い、鞘に納めてから男に近付くと、逃げる様に身を引いて睨んでくる。

「気持ち悪いくらい顔色が良くねぇけど」
「誰の顔が気持ち悪いって?」
「言ってねぇよ」
「くそっ、だめだ…」

側の木に手をついて、俯いた顔を押さえながら男は呻く。

「おい…っ」

前のめりに倒れそうになった男の腕を掴んで抱き留める。落葉と同じ色をした髪が揺れた。

「ねむィ…」
「…………は?」

ねむい?…眠い、だぁ?
傷はどうでもいいのかよ。
見れば既に意識を飛ばしている。顔色は無いが息は確りとある。浅く短いのは寝息とは違うけれども。
けれど、それだけだ。
助けてやる義理など無い。
連れ帰っても近習や家臣たちの小言を増やすだけだ。追い払うくらいだから、自分がいなくなれば仲間か何かが助けにくるのかも知れない。
烏が鳴いた。
見上げると、少し離れた枝に一羽の烏が留まっていた。
見据える赤い眼は怯まない。

「……仕様がねぇな」

鴉に突かれるままにしておくのも寝覚めが悪い。
倒れた男を両腕で担いで、来た道を戻った。


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Who killed Cock Robin?
I,said the Sparrow,
With my bow and arrow,
I killed Cock Robin.

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2014/11/15 ( 0 )







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