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*後半少々胸くそ悪めな展開有り






私は順風満帆に学園生活を送りたい、なんなら村人C辺りの配役で構わなかったのになぁ…
ひょんなことから気が付けば私は学園の生徒とすれ違えば2度見される回数が増えて行く。
2度見される村人Cってどんな奇行的な役柄なんでしょうか…

エステルと一番最初に仲良くなったのが運のつきだったのか…いやそれはとても嬉しかったし、言い方がなんだか悪いなぁ…
エステルは学園で人気TOP2であるあの目立つ先輩たちと仲が良くて、私もそれで先輩たちと仲良くなれて、いい先輩たちだと思うからそれもまた嬉しい限りなんだけど、エステルはともかく、編入生の私は少しの間やっかまれたりもあったし
いや、恨んでる訳ではないんですよ。大変な時もあったけど、楽しいことはそれ以上にあるのだから
それに”今”がなかったら、私はもしかしたらレイヴンと付き合っていないかも
たらればだけれど、私が学園に編入しなかったら、エステルと同じクラスじゃなかったら、いや、もっと前かもしれない。
両親が亡くならなかったら…?弓道をやっていなかったら?
パズルのピースはどれか一つでも違えたらきっと違う作品もとい、違う"今"になっていたんだと思う
エステルもユーリ先輩も、フレン先輩もそして、レイヴンも私にとっては必要な存在であることは間違いない
だけど…

「おーい、姫」

だけど…さ?

「おーいってば〜高瀬姫ー!」
「もうー何回も呼ばなくてもわかってますぅ!!」
「うゎぁっ!なんだよ、聞こえてたんじゃん」
「今日も行かなきゃダメ…?」
「ダメ」

私の名前を呼んでいたのも懇願を瞬殺したのも学級委員の山田くんだ
わかり易くそっぽを向いて見せると、強行手段だと言わんばかりに山田くんは私の腕を掴んで立ち上がらせる
私が行きたくないと喚いても近くにいるマイコちゃんもエステルも助けてはくれない。
いや、エステルさんそこは助けてくれてもいいんじゃないですかね!?
今、私ある意味貴女のお陰で初めて困っています!


「姫、観念して下さい。山田くんが困ってますから…」
「くぅ…!」
「そ、そんな顔しても助けてあげられないんです…だって…」
「だって…?」
「ミスミスターコンのリハーサルは出場者が揃わないと始められないって言っていたじゃないですか!他の人に迷惑はかけてはいけませんよ…?」
「……いってきます」

だけど!こんな"今"は私求めてなかったなぁ〜!


△△△


文化祭の準備が着々と進んで行くなか、準備期間残り2週間のところで遂に私はミスミスターコンテストの出場者打ち合わせなるものに先日参加した。
全学年から男女1名ずつが選出されるので、集合場所は小会議室だ。
決まってしまたものは仕方ないのだし、初日は山田くんと大人しく向かってガラリと会議室の扉を開ければ、何らかに群がる女子の集団とまず目が合う
クラスの代表としてミスコン出場する女子の軍団はそれはもう可愛らしい人や、美人な人、長身モデル体系な人
学園にこんなに美女がいたんだと圧倒されるくらいには眩かった
そんな女子の皆さんは私を見るなりため息を漏らしたり、少し私を威圧する様に睨みつけて来て、群れはそのまま散り散りになっていった。
一体なんだったのだろう。と台風の目、群がられていた対象を見据えてみればそこにはユーリ先輩の姿
ああ、なるほど。と思わず私は納得する
私は学園内では一応ユーリ先輩の彼女という認識をされてしまっていることもあって、私の姿を確認した女子集団は解散した、と言うことだったんだろう
私に気が付いたユーリ先輩は私に近づいてくるなり、助かった。と少し疲れた顔をしていた。
私と先輩が会話する度に隣にいた山田くんは、俺邪魔!?と言いながら交互に私たちを見る
そしてミスミスターコンを取り仕切る佐藤先生が入室してきて座る様に促されて、流れで私はユーリ先輩と山田くんの間に座ることになった

「えー…全員揃ってますね。今回初めてこのようなイベントが開催されることになりましたが…今回はその流れとリハーサルについて打ち合わせして行きます」

イベント担当の先生も初めての催しに少し辿々しい様子を見せながら打ち合わせは進行して行く
そして、優勝商品についての説明になった時に私が駄々を捏ねる元凶ともなった問題が起こった
私を先ほど睨みつけて来た美人な先輩が挙手をして、優勝者同士の1日デートできる権利を追加で付けて欲しいしと申し入れた
ユーリ先輩が優勝するのはもう目に見えているのだからこその提案なのだろう、と多分会議室の中にいた人の大半が思ったと思う
ユーリ先輩に関しては、なんだそりゃ。と小声でその提案に対して疑問を投げていたけれど、そのデートできる権利はまさしくユーリ先輩、貴方が標的ですよ
気が付いていないのは本人だけで、女子に関しては肯定をする意見がどんどんと上がって行く。
結果的に皆がそれでいいなら、と先生は流されてしまった訳で
そして私のイヤイヤの決定打となったのは…

「高瀬さんには悪いけど、私本気だから」
「はぁ…?」
「ユーリくんとデートさせてもらうから」
「あ…はい?」
「! 随分余裕があるのね!」

ムカつく!と怒りながらデートを提案した先輩は私の前から居なくなって行った。
私がぼーっと突っ立っていると、他の女子の皆さんも私を半ば睨みつけながらその場から退場して行く人ばかりで、どうやら私はミスコン出場者の反感を買ってしまったらしい。


「昨日の今日で私行きたくないよ〜…」
「俺だってあんなバチバチしてる場所行きたくないわ…まぁ…モテる彼氏がいると大変ってヤツだな」
「先輩とデートしたいなら別にいつでもして貰って構わないんですけどね…」
「おま…絶対それ言っちゃダメだぞ!」


血を見るぞ!と山田くんが脅し文句を唱えて、思わず身震いする
今日から体育館で立ち位置だとかをリハーサルしていく流れになるらしい
本番にはステージから特設で花道なんかも出来るらしく、突如決まったイベントなのに予算がそれなりに組み込まれている
なんとなくリハをこなして早々に退散してしまおう、と意を決して体育館に入るともうそれなりに人は集まっていた。
そして何故かそこにレイヴンがいる。


「あれ…レイヴン先生なんでいるんです?」
「コンテストの補助役になったのよ…」
「へー先生そういう面倒くさいの絶対やらないのに意外ですね!」
「山田…俺様のことなんだと思ってるのよ」
「特技サボリ先生」
「そーんなこと言ってると内申に響くぞー…」
「えぇ〜」

私がレイヴンに話しかけると山田くんが意外そうにレイヴンに茶々を入れている
学級委員だからこそ多分山田くんはレイヴンにきっと色々頼まれてるんだろうなぁとそのやり取りを私は見守る

「ま、2人共どうしても出たくてこの場にいる訳ではないのはおっさんも知ってるし、なんならおっさんもだから!ま、なんか困ったことあったらおっさんに言って頂戴!」

ね?と私の目線まで屈んでレイヴンが頭を撫でてくれる。
学校なのに予想以上に近づいたレイヴンの顔に思わずドキリとして、赤面しかけた所で山田くんが先生、俺もー!と悪ノリの如くレイヴンに頭を撫でる様に猫なで声で冗談っぽく突進した
そのお陰でなんとか我に返れたのでグッジョブ山田くん
3人で笑っていると、女子のリハーサルを始めると言われて私はレイヴンと山田くんから離れてステージの方へと移動した。
頑張れよーと山田くんが応援してくれるので、頷こうと振り向くと隣にいたレイヴンが口パクで”がんばれ”と言ってくれていてむず痒くなって即座に私は前に向き直る。
佐藤先生の説明を受けて学年クラス順に花道を順番に歩いて立ち位置の確認をすると、特技披露の話になった。
昨日の時点で特技に必要なモノがあれば申請するように、と言われていたけれど私は披露出来る特技は特にない。
順番に先生が生徒の特技披露を聞いて回っていて、どうしようかと考えている間に私の所に先生がやって来た。

「高瀬さん、特技披露は何を行いますか?」
「あ、あの…それがまだ決められていなくて…」
「あら、そうなの?」
「はい…」
「許可が必要なモノもあるのだから早く決めて下さいね」
「すみませ「高瀬さんには自慢の弓道があるでしょ?」
「え…?」

私が先生に謝ろうとした所で昨日啖呵を切られた先輩が意地悪く口出しをしてきた。
思わず戸惑いの声をあげれど、先輩の猛攻は止まらない。
自分は弓道のこと全く知らないけど、私が弓道をやっていたことを何処かで聞いたらしいその先輩は弓道部顧問であるレイヴンにまで話を振る

「レイヴン先生ー、弓道のあの丸いのって体育館に持って来れないんですかー?」
「丸いのって…いや、まあ持ってこれないことはないけど…でも姫ちゃんは」
「私見たいな〜」

私を置いてけぼりに周りの女子たちが、見たい見たいと囃し立てる
そうだった、私は反感を喰らったままだ
恐らく弓道の案を出した先輩は私が弓道をやれない理由を知っているんだろう
最早嫌がらせを通り越した周りの空気に私は俯いた
握った拳がわなわなと震え始める
妙に盛り上がる女子の騒ぎを見ていたからか私を援護しようとユーリ先輩がやめる様に声を上げている。

「おい!やめろって、人には出来るもんと出来ないもんが…」
「………す」
「…姫?」
「…ります」
「えー、聞こえないけど」
「やりますって…言ってるんでしょうがっ!!」


挑発的な先輩に対して私は勢いで啖呵を切って返した瞬間だった


▽▽▽



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