あーしまった。またやってしまった。
どうやら昨夜は飲み過ぎたようだ。
ベッドには昨夜確か隣で飲んでいたであろう見知らぬ女。
カウンター席で隣だったもんだからついつい話し込んじゃって、あーそんで…うーんと…。
どんなに記憶が朧げでも、すやすや眠っている女と自分の頭痛、一糸纏わぬ姿とを考えれば状況はわかったも同然である。


「はぁ…」


まあ別に自分が決まった相手を持っている訳でも約束した相手もいないが、また増やしてしまった…なんて自分の貞操観念のだらしなさにため息がでる。


「ちょいと、お姉さん。起きてー」


優しく名前も知らない女を揺すり、起こす。
起きた女は、満更でもなかったようで少し猫なで声で近寄って来たが、姉さん仕事は?大丈夫なの?
と、時計を指差し家から出るようにやんわりと突き放した。


「またよろしくね、レイヴンv」


なんて、玄関あけた状態でハートでも飛んできそうなご機嫌な声で女は出て行った。
ドア閉めて行けよ…。
あの飲み屋しばらくいけないな…。


開け放たれた玄関を閉めようと一歩外へ出て気配を感じて横を見れば、最近越して来た隣人がいた。
なにこれちょっと気まずい。


「…あー姫ちゃん、お、おはよ〜」
「…はあ、おはようございます」


何故ここで声をかけたし。と目で語られているような気がした。
それはそうだ。彼女も気がついているのだろう。
前回初めて会った時とは違う女が隣人の家から出て来たのだ。
彼女の年齢はわからないが、きっと浮気だとか、そう言う感じに取られているに違いない。
見つめられる目がとても冷たく感じるのはきっと気のせいじゃない。
もうすでに引き返せる気がしないので世間話をチラッとして引っ込もう。


「そ、そう言えば姫ちゃんはお仕事とかは?」
「私は学生なので、もうしばらくお休みです。」
「そ、そうなんだぁ〜学生さんだったのねぇ。どうりで若い訳だ」
「そういうレイヴンさんは?」
「あ、おっさんもね今は春休み中〜ってね!」


ふーん。と聞こえて来そうな、なんだか更に目線が冷たくなった気がする。
もしかしてニートとかだと思われてるかも?まあ仕方がないか。本当に春休み中だけども。
洗濯日和だし洗濯でもしようかなぁ〜と手を振って気まずい空間から脱出した。
さっきの女といい頭痛といい、隣人の冷たい目線といい…すっきりしないのでまずはシャワーだ。
そろそろこの締まりのない休日の過ごし方を改めないと、明後日からの出勤に差し支えそうだ。








2 / 86


←前へ  次へ→



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -