今日から入学式。
数日前に隣町の孤児院から独り立ち。
両親の財産と実家で使っていた家具なんかも持ち出してまだまだ慣れない一人暮らしと共に高校生活が始まる。
昨年、両親を亡くしてから進学する気力や希望なんてなかったけれど、両親達は私がヴェスペリア学園に通うのを楽しみにしていたし、孤児院で家族になってくれた人らの励ましもあり、どうにかたくさん勉強して特待生として学園に迎え入れてもらえる事となった。
いくら両親が残してくれていたお金があったとしても、予期せぬ事故で亡くなってしまった両親が頑張って貯めてくれていた物を使い込む訳にはいかないので、学費免除の特待生だ。
成績維持、バイト自分に出来る事があればやれるだけやらなければ。

そう考えながら、新しい制服に袖を通し、ローファーを履き、いざ登校。
マンションから学校は電車で1本。申し分ない立地だ。
今日は早起きもしたし周りを散策がてら歩いて向かう。

これから通うヴェスペリア学園は中高一貫校でエスカレーター式なので高等部から編入するひとは少ないらしい。
友達が出来ればいいけれど。


歩き始めて40分ほどたった頃、学校にたどり着いた。
クラスの割り振り表をみて、昇降口へ行けば自分が中学時代に通っていた学校の規模とは雲泥の差があるのではと言うくらいに整備されきれいな生徒用玄関である。
ため息が出そうだ。

自分はなんだか場違いの学園に来たのでは…なんて思いながら割り当てられた靴箱にローファーを入れて新調した指定の上履きへと履き替えた。

受験の時と、特待制度の手続きのために何度か来校したが、その時は緊張や、先生に誘導されて移動していたので全く校内の事を覚えていない。これはしばらくの間迷子にならないよう注意しなくては。


なんとか自分の教室へとたどり着き着席する。
エスカレーター式で他の生徒は顔見知りが多いのか、私の方をチラチラと見る人が多い。
私は見せ物じゃないのだけれど。
ため息をつく一歩手前で、自分の目の前に影が出来た事に気がつき顔を上げた。

「おはようございます!初めまして」

ピンク色の髪の毛の女子生徒がにっこりと私を見つめて立っていた。
お嬢様の気品なんてモノには今まで縁はなかったが、きっとこれがそうなのだろう。

「おはよう、初めまして!」
「はい!私、エステリーゼと申します。他校からの編入の方ですよね?」
「エステリーゼさん。はい、私は隣町の中学から編入してきた高瀬姫です。よろしくね」
「あまり編入してくる方っていないので、つい声をかけてしまいました!
何かわからない事があったら言ってくださいね!!
あ、あと私の事はエステルって呼んでくださいね、姫!」

と半ば強引に呼び捨てでの呼び合いが始まったが、いろいろ話しているとすぐ説明してくれるのでめちゃめちゃ助かる。エステル、いい子だ。
エステルを皮切りにほかの生徒も話しかけてくれた。
あたりのクラスかもしれない。

話が弾んでいると教室内で放送が流れ、入学式が始まる旨が知らされた。
さ、並んでいきましょう。とエステルが手を繋いでくれた。


入学式では校長先生の話や来賓の話、在校生からの話もあった。
在校生代表はどうやらエステルの幼馴染のようでエステルに似てまじめで気さくそうな金髪の青年だった。

私からしたら知ってる人なんて皆無なので先生の名前なんかも覚えるのが大変だ。
今から各クラスの担任、各教科の先生の発表だ。

うん、全然覚えられる気がしないわ。

名前を呼ばれた先生が順番に壇上にあがって、一礼して並んで行く。
ふと見覚えのあるような気がする人物が目線に入った気がした。

「1年C組担任、理科総合、レイヴン!」
「はいはーい、よろしくねぇ〜」

「…は!?」

嘘でしょ。夢だと言ってください。
あの人私の隣人ではないでしょうか。
開いた口が塞がらないとはこの事でしょうか。
しかもよりにもよって担任ときた。
というか、あのたらし男は教師だったのか、私の隣人で女たらしで担任…?
目が回りそうだ。


「姫?どうかしましたか?」
「え、あ、いや、なんでもない…」


クラスはもしかしたらはずれだったかもしれない。













3 / 86


←前へ  次へ→



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -