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冬休みが明けて今日からまた学校だ。
なんだかんだでレイヴンとほとんど一緒にいるかバイトで冬休みは一切エステルたちと会わなかったからなんだか会うのが楽しみで今日は随分早起きだった。
学校に差し支えが無い程度に薄く化粧を施して髪の毛やらの最終チェックを鏡の前でしていれば、レイヴンの家の方からガチャリと扉を施錠する音が聞こえた。
今日は始業式だからちょっとやることが多い。と昨日口を尖らせながらぼやいていたのを思い出してクスリと笑うと携帯が震えて画面に表示されたのはレイヴンの名前とメッセージ文だ。


7:25『姫おはよ。今日から学校だから流石に一緒に行くとかは出来ないけど気をつけて登校するんだよ』
7:26『おはようございます!わかりました。車気をつけてね、いってらっしゃい』


すぐに返信すると、OK!とクマが手を振っているスタンプが画面に浮かび上がって来て車でもう出発したのだろうと思い私は制服のポケットに携帯をしまった。
朝ご飯も食べたしそろそろ私も家を出て歩いて学校に向かおう。


△△△


「姫!おはようございます!」
「エステル〜!久しぶり、今年もよろしくね」
「はい!よろしくお願いします」


久しぶりに会ったエステルは相変わらずニコニコと笑顔で教室に入ってきた私に挨拶をしてくれる。
冬休みはどう過ごしていただなんてあるあるな雑談に花を咲かせていると、もう間もなく始業式が始まるのか予鈴がなった。
冬の体育館は寒いのでコートを羽織ってそれぞれに移動して行くと体育館に向かう途中でユーリ先輩にも会い一緒に向かった。
いつも一緒にいるはずのフレン先輩が見当たらなくて尋ねると始業式で壇上に上がるからと別行動だったらしい。
校長先生の少し長いお話を聞いて、その後に生徒会のフレン先輩が壇上に上がる。回りの女子が壇上に上がったフレン先輩の姿を見て少し騒がしくなるのを横目にチラリと、体育館の脇の方に横並びになっている先生方の方に視線を向ければ丁度レイヴンと目線が搗ち合った。
普段は白衣と無造作に結い上げている髪なのに、さすがに今日はスーツで髪の毛もしっかり梳かして下ろして出勤しているのもあって私は思わずドキリとした。
目が合ったことにニヤリとレイヴンが笑うので思わずこちらもニヤけてしまって、フレン先輩の話は一切頭に入ってこなかった。
冬休みが始まる少し前、付き合い始めた頃は特に意識はしていなかったけれど冬休みの間に随分長い時間一緒にいたこともあって大人数がいるなかで2人で目線を合わせているのはなんだか悪い事をしている気分に少しだけなった。


「もう!姫ったらフレンの話を聞かずに一体何処によそ見をしていたんです?」
「えっ!えーっと…」


始業式を終えて教室に戻る道すがらエステルはわかりきっている質問を私に小声で投げかけて来た。
エステル本人も私が何処を見ていただなんてわかっている癖にわざわざ聞いて来るなんてなんだかユーリ先輩みたいだ。
いじわるなこと言わないで!とエステルに言うとクスクスと笑うので確信犯だ。そんな所いくら付き合いが長くても先輩に似なくていいのに!


「ほんじゃ、今日はこのHRが終わったら解散!冬休みボケしてて遊びすぎないようにして頂戴よ!」


レイヴン…先生がHRを短めに締めると教室にいる同級生たちは一斉に話し始めた。
席替えしても尚くじ運がないのか相変わらず前の席に鎮座しているマイコちゃんは(私はマイコちゃんの後ろの後ろ)先生を含めてお馴染みのギャルグループで話を盛り上げている。
声が大きいこともあって教室中の人が多分その会話が聞こえていると思う。
今日の話題は先生の服装と髪の毛いじりらしい。
エステルが私の席にやってきて、相変わらずですね…と少し困ったように笑っていると、マイコちゃんは私たちも会話に取り込もうとしているらしい。


「ね、ね!!エステルも姫も先生の髪とスーツって違和感じゃない?私はいつもの方が好みなんだけど、どう?」
「ま、まあ普段の格好から急に見ると見慣れないですけど…でも文化祭の時にもレイヴン先生はその髪型で執事になりきっていましたから、私は意外とお似合いだと思ってますよ!」
「あー確かに!執事似合ってたかも!姫は?」
「わ、私…?」


エステルが全て言ったようなものなんだけどなぁ…と自分に改めて振られたのでマイコちゃんは答えないと解放してくれないだろう。
うーん。と頭を捻るとなんだかレイヴンも私の解答を待っているようだった。なんか心なしか目が爛々としてるのは気のせいですか?


「そんなに迷う?どっちが好みかどうかだよ〜?」
「好み…うーん。どっちも好きかな…?」


好みなんて言われたらそれは全部好きには変わりないんですよ。だって彼氏様ですから…。
漏れそうになる心の声を押さえ込んで振り絞った答えにマイコちゃんがキャーキャー言い始めるので、自分が発した言葉を頭の中で反復すれば、結構恥ずかしいことをストレートに言った気がする。
私たちの関係を知らないマイコちゃんは、冗談っぽく愛の告白!とニヤニヤと言い始めて思わず顔に熱が集まった。


「姫ってば顔赤いよ?先生みたいなのがタイプなんだぁ〜」
「え、ちょ…!」
「ん…?なんか先生も顔ちょっと赤くない?」
「いや〜姫…ちゃんが言ってから顔赤くされちゃったらおっさんも流石に照れるわ!」
「ふーん?」
「エステル!先輩たち待たせてるだろうし早くいこっか…!」
「は、はい!」


事実待ち合わせはいつものようにしていたけれども、先輩たちをダシにその場からそそくさと逃げると恥ずかしさに両手を顔に押し付けながら歩いた。
エステルは私の気持ちを察してか肩をポンポンと優しく叩きながら昇降口まで誘導してくれた。
マイコちゃんはそんな風に勘ぐる子ではないけれどボロを出してしまいそうで…新学期、前途多難極まりない。
昇降口までの道のりをずっと顔を覆っている私を見たユーリ先輩は変な顔してた。



▽▽


(あーもう…姫ちゃんってば可愛いすぎ。学校じゃなかったら危なかった…)





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