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先生が告白されてる現場を見てショックを受け、土砂降りの雨に打たれたお陰で風邪を拗らせた私は文化祭の振り替え休日も含めてでゆっくりと休息をとった。
それも先生からの手厚い看病付きで。
今日は快調!と言っても過言ではない。実際昨日の時点で元気だったのだけれどもまだ本調子じゃないでしょ?と先生はわざわざ買い物とご飯まで作りにきてくれた。
先生の中で私の位置づけがどのような感じになっているのかは定かではないけれど、心配してくれているのは確かで私に過保護な先生を見れた快調且つご機嫌だ。


「おはよう、エステル、フレン先輩!」


たくさん寝て今日は早起きも出来たこともあってゆっくりと歩いて通学路を歩いていればエステルとフレン先輩が一緒に歩いているのが見えて声をかけながら駆け寄るとフレン先輩はにこやかに、姫おはよう!元気になったんだね!と声をかけてくれたけれど、エステルの方は何故だかぎょっとした顔をしていて思わず私は首を傾げる。
少しだけ身体を震わせているエステルの顔を覗き込んだ瞬間真っ正面から首をホールドされた。


「もうっ!姫!貴女は病み上がりなんですよ!走っちゃダメじゃないですか!!」
「えっ…あ、ごめんね?」
「ごめんね?じゃありません!私心配したんですから!!!」


少しだけ目が潤んでいるのを見る限りエステルも相当心配してくれているのがわかる。
私よりも背の高いエステルの頭をポンポンと撫でながら宥めると落ち着いたようで離してくれた。
エステルには昨日電話して元気だ、と話したはずなのだけれど本人はそれでも私が走って向かって来たことが相当気がかりだったらしい。
エステルもエステルで過保護だ。


「ただの風邪だし大丈夫だよ、ほんと心配かけてごめんね。差し入れありがとうね」
「姫が元気になったならいいんです…!学校いきましょうか!」
「少し急ごう、じゃないと姫を走らせてしまうハメになるよ」


△△△


授業が終わってHRももうすぐ終わる。
運良く文化祭の残りの片付けだとかで前回の授業はほとんど進んでなかったようで一安心した。
本来なら今日はバイトの予定だったけれどそれも先生が店長に体調を崩したことを話していたみたいでお休みになった。どこまで私は手を回されているんだろうか…。
先生が授業中やHR中もまだ少しだけ心配そうに私と目を合わせてくるのが気恥ずかしくて勘違いしてしまいそうだった。


「姫今日はどこかにお茶でもしに行きませんか?」
「うん!行く!…っあ」


机に置いていたスマホが震えて手に取ろうとしたら勢い余って床へ滑り落ちて行った。
斜め前の席のエステルはスマホを拾おうと屈むと、丁度画面が上になっていたようで何かの通知が出ていてエステルはそれを見て硬直する。
私は何を見てエステルが硬直しているのか検討も付かずにスマホを拾おうと屈めば通知内容が目に飛び込んできた。


16:10 『姫ちゃん体辛くなかった?アレだったら今日も俺ご飯作りに行くし、もう少し待っててくれるなら一緒に帰る?』


エステルが見てしまったのは紛れもなく、先生と表示されているメッセージ文で先生と生徒がするやり取りには先ず以て見えないだろうし、普通先生とメッセージのやりとりなんてする生徒早々いない。
硬直していたエステルがゆっくりと私の顔を見るとニッコリ笑っていた。


「姫、お茶。行きましょうか」
「…はい」


ニコリと笑うエステルが少しだけ怖いと思ったのは初めてだった。



△△△


「それで!!先生とはどうなっているんです!?」


カフェに入る前からずっとウズウズしていたエステルはやっと話せる!と顔が物語っていた。
いつも一緒に帰っているフレン先輩とユーリ先輩もいる訳で、ユーリ先輩は私が先生が好きなことを知っているけれどエステルもフレン先輩もそのことをまだ話していなかった。
ユーリ先輩はバレたのか、と何も言わずに片手で頭を抱えてフレン先輩は置いてけぼり状態だ。
エステルは興奮冷めやらぬようで手を胸の前に出して期待の眼差しを私に向け続ける。正直視線が痛い。


「えーっと…私が風邪で倒れて、ユーリ先輩がお見舞いにきてくれた時に私朦朧としすぎて鍵かけ忘れちゃったみたいで…」
「お前…不用心にも程があるだろ…」
「さすがに女性の一人暮らしだしね…」
「まあ…一応無事だったんだからそこは二の次です!!」
「ごめんなさい…えと、それでその後…先生が心配して様子見に来てくれたみたいで…私倒れてたらしくて…そこから先生がすごい看病してくれて、ここ数日間ずっと先生が家にご飯まで作りにきてくれて、ます…」


飽きれたため息と感嘆のため息とが混じって視線が私に集まる。
エステルの猛撃はそれだけでは終わることはなかった。


「レイヴン先生が姫のことを心配してるのは十分にわかりました!それで…姫はどうなんですか?」
「私は…先生のこと好きだよ…」


まあ!とエステルが声を上げて、私の顔に熱が集まると同時になぜかフレン先輩が小さく笑いながら何故か一緒に赤面する。
看病されたことはユーリ先輩も知らないはずだけれどあまり驚いている素振りもなく、なんだか得意げに笑っている。


「やっと俺以外に言ったな」
「ええ!ユーリは知っていたんですか?」
「それは僕も初耳だね」
「ユーリ先輩には言ったというかバレたんですよねぇ」
「お前結構わかり易いからな。ま、いいんじゃねーの?味方は多い方が良いだろ?」


こうして予期せぬ方向で私の恋愛事情が3人に知れ渡ることになった。


「…付き合うのは秒読みかもな…」
「ユーリ先輩?なにか言いました?」
「いーや、なんでもない」



▽▽▽



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