※バク獏。バクラ視点





童実野町にも雪が降った。
この町は海馬がバトルシティを行ったりと
それなりにでかい町ではあるが、雪が降らない方ではない。
しんしんと降り積もる雪の中、俺はタイムセールの帰りだった。
いくら雪が降っていても時間による安さには敵わない。
実質のところ、敵わないのはタイムセールではなく
俺の宿主サマなのであるが。
目線をほぼ下に向けて、
雪に足をとられながら音を立て歩を進める。
しばらく歩いて、ふっと顔を上げた。
真っ白。
まるで色を持つのが黒いコートを着た自分自身だけのようだ。
でも、そんな世界に一瞬何かを
見たような気がして、じぃっと目を細める。
いる、確かに。
寒さもタイムセールも敵わない俺の宿主サマが。
傘もささないでこの白の中にたたずんでいる。
「おい」
走っていき1m距離まで近づいて声をかけるが気づいた様子はない。
空を見つめているだけ。
「おい!!」
さっきの2倍の声量で呼びかけると、
宿主はようやっと気づいたようだった。
「バクラだ。どうしたの?」
「どうしたも何も、てめぇに頼まれた買い出しの帰りだろうが」
ネギのはみ出した袋を宿主の方に突き出して答え問う。
「それよか宿主はどうしてこんなところに
つっ立ってるんだよ、風邪ひくだろうが」
すると宿主は少し笑った。
「消えてしまえるような気がしたんだ」
さくさくくるりと、一回転。
「このままこの世界にとけてさ、消えてしまえる気がしたんだよ」
見ればたしかにそうだった。
自分とは正反対に真っ白のコートを着た宿主は、
このまま本当に消えてしまうのではないかというほどの儚さで、
ひたすら琥珀色のその眼にちらちらと白を映していた。
素直に絵になるな、と思ったが
こうしていたら本当に風邪をひいてしまう。
「ほら、行くぞ」
宿主の手を半ば無理矢理ひいて、家への道を再び歩き始める。

「バクラの手は冷たいね」
「バカ、心はあったけえんだよ」
「大邪神なのに?」
「うるせえ」

隣でふふふと笑う白はたいそう幸せそうだった。

ホワイトアウト

2013/12/15

(return)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -