[優]


そして足もすっかり治り、もうすぐ冬休み。
同時にクリスマスも近づいている。
学校終わりに買い物をしていると、両手に重そうな荷物を持った麻衣ちゃんがヨロヨロしながら向かい側の道を歩いているのに気づく。
見てられなくて、急いで道を渡り寄っていく。


「半分持つよ。」

『あ、優!ありがとう。』


無言で麻衣ちゃんの後ろをついていき、車にたどり着いた。


『ほんとありがとう。助かった。』

「全然いいよ。じゃあね。」

『待って!お礼に…お茶でもどう?』

「ごめん、友達と約束あるから。」


この日を最後に麻衣ちゃんとは話さなかった。
普通に生活してても担任をもってるわけじゃない麻衣ちゃんに会う事は滅多になくて、自然に考える日も減っていった。
そして卒業を明日に控えた帰り道、飛鳥と最後だからとよく行っていた公園に寄り道する。


飛鳥『なんか全然実感ないなー。』

「まあ、飛鳥とは大学も一緒だしねー。」

飛鳥『3年間いろいろあったね。』

「うん。楽しかったなあ。」

飛鳥『麻衣先生に最後会いに行くの?』

「あー、たくさん迷惑かけたからなあ…」

飛鳥『ほんとはまだ好きなんでしょ?』


飛鳥のこの一言にドキッとする。
会わなくなって、話さなくなって気持ちがなくなると思ってたのに、結局モヤモヤと心の中に残ったままだった。
それを飛鳥はお見通しかのように言い当ててくる。


飛鳥『どうせもう会わないんだから最後に当たって砕けろ。』

「それもありかもなあー。」

飛鳥『ダメだったらこの飛鳥ちゃんが慰めあげるから。』


次の日、飛鳥の言葉に背中を押された私は保健室に向かう。
ドアを開けて入ると麻衣ちゃんはいなかった。
少し経っても麻衣ちゃんは来ない。
帰ろうと思い立ち上がった時丁度ドアが開いた。


『よかった…まだいた…』

「今帰ろうと思ったとこだった。」

『齋藤さんが教えてくれた。保健室に優がいるって。』

「最後だから挨拶しに来た。たくさん迷惑かけちゃったから。」


そう言いながら自分の椅子に座る麻衣ちゃんの前に椅子を持っていき、腰をかける。
毎日こうして麻衣ちゃんの前に座ってくだらない話をたくさんしてたっけ。


「久しぶりだね、こうやって話すの。」

『いつからだっけ?来なくなったの。』

「んーと、二学期だったかな?」

『そうだそうだ、家まで送った日だ。次の日からぷっつり来なくなるし、すれ違っても目すらあわないし…』

「そりゃ失恋したんだもん。」

『寂しかったなあ。』

「嘘ばっかりー!」

『ほんとほんと。』


そう言って笑ってる麻衣ちゃんを見て、この感じ懐かしいなとしみじみ思う。
そしてやっぱりまだ麻衣ちゃんの事好きだなと痛感する。


『今だから言うけど、彼氏なんていないよ?』

「でも指輪してた。」

『あれぐらいしないと優諦めないでしょ。』

「なんだよー!まんまと引っかかった!」

『単純で助かった。けど、その分避け方が尋常じゃなかった。結構しんどかったなあ。』

「結局諦めれなかったけどね。今日ここに来たのも最後にもう一度だけ伝えたくて。」

『うん…』

「麻衣ちゃんが好き。笑った顔も怒った顔も全部好き。大好きだよ。…今までありがとう。」

『何勝手に終わらそうとしてんの。』

「え?」

『もう卒業だからいいよね…』


立ち上がり近づいてきた麻衣ちゃん。
そして重なる唇。
少し離れた麻衣ちゃんは笑ってる。


『私も好きだよ。』

「ほんとに…?」

『今度遊びに行こ。ん?違うな、デートか。うちでお泊まりもしよう?』

「いいの?」

『もう生徒じゃないからね。手出しても怒られないっしょ。ずっと好きでいてくれてありがとう。好きにさせたんだから責任とってよね。』


そう言ってギュッと抱きついてきた麻衣ちゃんを潰れるぐらいに抱きしめ返す。
絶対幸せになろうねと願いをこめて…


end...


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