[飛鳥]



驚かそうと思ってサプライズで来たらまさかの友達お泊りしてるパターン。
友達とわかってても嫉妬してしまう。
しかも優の友達って、みんな可愛いんだよね…
会いたい時に会えないこのもどかしさ。
この職業を何度恨んだことか。
お風呂から上がり、優が待っているであろう寝室へ向かう。
勢いよくドアを閉めるとその音にビックリした優は苦笑いをしている。
何度も話しかけてくるけど、全部無視。
我ながら子供っぽいなあと思ってしまう。
優も心が折れたようで何も話さなくなり、ベッドに入ってきた。


『ごめんね。』


そう言って背中にくっついてくる優。
なんで謝るの?
優は悪くない。
ただ友達を泊めただけ。
もう少し私が大人になれたらなあ…
朝起きると昨日寝る時にあった背中の温もりはなくなってて、リビングのドアを開けようとすると何やら声がする。


『ご飯食べてけばいいのに。』

ねる『いやいや、緊張して無理。それにせっかくの2人の時間邪魔するのもね… ちゃんと仲直りしてね?』

『誰のせいだと思ってんの。』

ねる『ごめんごめん!今度ご飯奢るからさ!』

『駅まで送るよ。』

ねる『ううん、起きて優いなかったら余計ケンカ拗れるでしょ?』

『確かに。じゃあまた明後日会社でね?』


ドアを少し開けたねるちゃんと目が合う。
やば。盗み聞きしたみたいに…いや、盗み聞きか。


ねる『ねえ、優。』

『ん?』

ねる『飛鳥さんの事好き?』

『うん。大好き。何急に。』

ねる『なんでもない。じゃあまたね。』


そう言うと私に本当にすみませんでしたと言って帰って行った。
ねるちゃんとすれ違いでリビングに入っていく。


『おはよ。』

「おはよ…」

『あ、返事してくれた。』


そう言って笑っている優の顔を見て、やっぱり好きだなあと改めて思う。
ソファに座っている優の膝の上に腰掛けると、すぐさまお腹に腕が回ってきてギュッと抱きしめられる。


『まだ怒ってる?』

「ううん。でも他の子にあんまり優しくしすぎちゃ嫌。」

『わかった。今度から誰か泊まるときは連絡する。』

「うん。じゃあ、大好きな飛鳥さんがご飯作ってあげようかな!」

『ふふっ さっきの聞いてたの?でも飛鳥さん何もできないと思うので、座ってて?』


そう言って私を膝から下ろして立ちあがるとキッチンに向かい、しばらくするといい匂いがしてきた。
慣れた手つきで2人分の料理をテーブルに並べてくれる優。


「優はほんとに優しいよね。めんどくさいし、わがままだし、素直じゃないし… 私だったらすぐ私の事振ってると思う。」

『そう?1回も思ったことないけどなあ。飛鳥は口には出さないけど態度に出してくれるからまだ助かる。でもたまには好きって言ってくれないと…』

「好き。」

『だい…?』

「大好き。」

『あい…?』

「調子に乗るな。」

『顔、真っ赤だよ。』


ほらあ、すぐにこうやってからかってくる。
でも嬉しそうな優の顔を見て、たまには言ってあげてもいいかなと思った。
言えなかった最後の愛してるを。



end...



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