[ねる]



『お待たせ。』

「シートベルトの着用をお願いしまーす。はい、発車しまーす。」



ソロ曲のモノマネされたりここの振りの時ああだこうだと欅の曲で盛り上がる車内。
ねるの好きな曲にしていいよと言われて、何にしようか悩んだ結果バラード。


『おー 切ないの選ぶねえ。』

「いい歌だよね…」

『このタイトルは友達の名前なんだって。その友達の恋愛を元に書いた歌らしいよ。』

「詳しいじゃん。」

『このアーティストさん好きな友達がいてさ。教えてくれた。』

「やっぱ今はこっちの気分かな。」


そういって曲の途中で違う曲にする。
こっちもいいよねーって真剣な顔で運転してるせいか、その横顔がいつもより綺麗で可愛くてかっこよく見えた気がした。
この曲で伝わればいいなぁなんて甘い考えだと思う。
でもほんとに伝わってたら嬉しいなあ。


"不器用だから うまく言えない
あなたにただ スキと言って欲しいだけなのに"


今のねるにぴったりだ。
ねえ、優。
優の気持ちが知りたいよ。
好きって伝えたらどんな反応するの?
もうこうやって過ごす事なくなっちゃう?
それとも優しいから受け止めてくれる?
教えてよ…


『着いた。ここから少し歩くけどいい?』

「うん。大丈夫。」


そう言って連れてこられたのは街頭が1本もない場所。
星がたくさん見える。


「星やば。久しぶりにこんなたくさん見たかも。」

『ここいいよね。初めて来た時地元の人に教えてもらったんだ。』

「へー。初めてじゃないんだここくるの。」

『うん。欅になる前に2回来たことある。』

「…誰と?」

『1回目は大好きな高校の友達達。2回目は… 言わなきゃダメ?』


困ったような笑顔でこっちを見てる。
あー察しろ的なね。
加入前で1回目が高校の友達なら2回目は当時付き合ってた人的なやつか。


『そろそろ2時じゃない?』

「3分過ぎてる。」

『「あっ!」』

「見た?」

『見た!あ、また!』

「めちゃ流れるね。さすが流星群。」


30分ぐらい経ったかな。
厚めのアウター着てきたけど山だから寒くなってきた。
あったかい格好してきたつもだったけどなあ。


『寒いんでしょ。』

「ううん。」

『嘘だ。手冷たいし。』


ちょっと待っててって言うと毛布を取りに行ってくれて、風邪引いちゃうからって優がかけてくれた。


『あったかい?』

「んー。まだ寒い。」

『ほら、寒いんじゃん。』


そういうと後ろに回りこんできてピタッとくっついてきた。
2人だとやっぱあったかいねーってすぐ近くで優の声がする。
後ろにいるから見えないけどきっと大好きな笑顔で笑ってるんだろうなあ。


『2回目来た時ね、1回目来た時と全然違って見えた気がして。一緒に見る人って大事だなあって思ったの。』

「2回目来た時の方が綺麗だった?」

『ううん、その逆。こんなんだったけって思っちゃって。』

「え?見れなかったの?」

『見れたよ。だけど、たぶん初めて来た時は感動とそれを共感できる大切な友達がいたからすごく綺麗に見えたんだと思う。』

「2回目は?」

『1人で来た。確かに綺麗だったんだけど、なんか違って。むしろ2回目来た時の方がたくさん出てたんだけどね。』

「1人で来たんだ…」

『あ、今笑ったでしょ?』

「笑ってないよー!意外だなと思って。」

『そうかな?2回目来た時欅のオーディション合格した後だったの。なんとなく星みたくなって。でね、次来る時はきっと大切な存在になってるであろうメンバーと来ようと思って。』

「それで連れてきてくれたんだ。ありがとう。」



優はここに大切なメンバーとして連れてきてくれた。
きっとこれ以上の気持ちはない。
もう今日で優への想いは断とう。


『でももう誰も連れて来る気はないかなー。』

「どうして?」

『これ以上大切な人できる気しないし。』

「え?」

『ねるのことが好き。』

「え… それは、えっと…」

『付き合ってください。』

「いいの?」

『ダメなの?』

「ダメじゃない。」



よかったーってそのままさらにぎゅーっと後ろから抱きついてくる優。
さっきよりなんだかあったかく感じる。
大好きな笑顔が見たくてくるっと向きを変えて向き合うとどうした?ってヘラっと笑ってて。
うん、やっぱり好きだ。


『流れ星にお願いしとかなきゃ。』

「何お願いするの?」

『秘密。』

「流れてる間に3回言わなきゃいけないんだよ。」

『え!そうなの?』

「声に出すと叶いやすいんだって。」

『へー。がんばろ。』


ピークの時間が過ぎちゃったからか流れる星の数がだいぶ減った。
次みたら帰ろうねって言ってるけどなかなか流れてこない。
優のお願い聞きたいし早く流れてほしいけど、流れてきたらもう帰らなきゃいけないし…
まだ一緒にいたいからこのまま流れてきて欲しくない気持ちの方が大きいかも。
あっ…


『ねるとずっと一緒にいられますように。ねると…』

「ふふっ」

『1回しか言えない。無理じゃん3回なんて。』

「流れ星にお願いしなくてもいいよ。特別にねるがそのお願い叶えてあげる。」

『じゃあお願い変えよ。』

「え?だめ。絶対だめ。」

『嘘だよ。叶えてくれる?さっきのお願い。』

「うん!」


車に戻るとあ、そういば…って言いながらなかなか車を発進させずにこっちを見てる。


「何?」

『好き。』

「え、うん。嬉しい。」

『ねぇ、好き。』

「何?怖い。」

『さっきから好きって聞いてない。』


そういうことか。
前から言ってたはずだけどなあ…
気にしてないからだよ。ばーか。


「好きだよ。大好き。」


そう言うと大好きな笑顔で笑った。
この笑顔をずっと近くで見ていられますように。
もう流れ星が流れてない星空にそう祈った。




end



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