「ちょっといいかな二人とも」


俺と朽崎が話す後ろで、遊馬は微妙に膨れっ面になって、不機嫌そうな声で言う。


「置いてきぼりの僕は非常に悲しいんだけど。これじゃあまるで蚊帳の外だ。僕を吸血虫にして一体何が楽しいんだい?」
「なるほど。つまりお前はあのぐるぐる巻きにされた線香一つで退治出来るんだな。これはいいことを聞いた」
「へえん。そんな態度をとるわけだ君は。いいよ。日頃君が言っているタチの悪い冗談、“紅顔の十七歳”を、現実にしてやろう。その寝不足気味の柴犬みたいな顔面を集中攻撃して、ひり痒くしてやろうじゃないか」
「やめろ。それではただの赤面だ。俺の美顔が、モテモテが!」


くすくす、と。
小刻みな笑い声。
朽崎は肩を揺らしてこちらを見ていた。


「何がおかしいんだ朽崎」
「いえ。二人の掛け合いが、あんまりおかしいものだからつい……ごめんなさい」


そうは謝るものの、まだ彼女はくすくすと笑っていた。
何がそんなに楽しいのやら一体全体わけがわからない。もしかしたら朽崎はワライダケを食べてしまったのかもしれないな。さてどうしたものやら。俺は生まれてこの方エノキとシイタケとマッシュルーム以外のキノコを咀嚼したことがないんだ。対処法など検討もつかない。

暫くの、間。

数瞬が幾度と過ぎ去った円な秒間の後、遊馬はなんとも言えず突拍子もないことを、俺に言う。


「君は僕のことが嫌いなのかな」
「話が飛躍しすぎだ何故そうなった」
「だったら教えてくれよ。何故僕を仲間外れにするんだい。それともこれはまやかしだとでも言うのかな」
「イエスまやかし!」
「呆れた」


遊馬は肩を竦めて首を振った。遊馬の髪もそのたびふわふわと揺れた。


「で、一体どうなんだ、深夜」
「何がだ」
「君は朽崎さんと親しく話しているようだし…………まるで知り合いのようじゃないか。二人は旧知の仲なのかな?」


そう――――遊馬は答えにくい質問をしてきたのだった。
全く。困ったものだ。一体なんと返せばいいんだ?
酔って半キチになってるときにバッタリ出くわしてその麗しい容貌に隠された凄惨な口元を見せ付けられて「綺麗ですね」とプラネタリウムで星空を眺める昔ながら恋人よろしく口説き落とすように声をかけて最後の最後に世界とアンコネクトしてぶっ潰れちゃったんだハハッ、なんてことを、あの小姦しい上半身裸姿のネズミが如く裏声を駆使し、目の前にいる憎らしい親友に告げよと?
そんな馬鹿なことが出来るか!


*prevnext#



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -