カニバリズムになった日

神町 真知はヘマトフィリアだ。
と言っても元々"そうなった日"に 彼はカニバリズムになっている筈だった。

「あれ?神父サマ」
オレが小腹が空いたからと一階に降りて行くと 真夜中にもかかわらず招かざる客が来たらしく神父サマは駆除&お楽しみ中だった。
神父サマが神父様をやり出してから 人当たりの良い神父サマは人気で 昼は結構街の人が出入りしていた。
その時色々と差し入れもあるせいか それ目当ての輩が度々侵入してくる。

お陰で始めてきた侵入者は禁殺週間なるものを実施していた神父サマの餌食となった。
溜まってたらしくあの時は酷かった。
「あぁ。マチクンですか」
手を止めた神父サマがこちらに歩み寄ってくる。
服は黒くて判りづらいが床に広がる血の出からして大分遊んだ後だろう。

ゾクリ…。

噎せ返るような血の匂いに肌が粟立つ。
神父サマに出会ってからは死体を見る機会も増えて 随分慣れていたつもりだったが

…オイシソウ

空腹時にかち合うのは初めてだった。
「そう言えば貴方はヘマトフィリアでしたね。コレの血 要ります?」
そう言って指差したのは侵入者だったもの。
「っ…イヤ…」
口を押さえ歯切れの悪い返事をするオレを神父サマはジッと見てくる。
「もしかして…」
眼鏡をキラリと光らせ 危惧していたことを聞いてきた。
「貴方…

肉にも興味あります?」

「っ!」
出来れば気付かれたくなかった。
気付きたくなかった。
初めて血を口にした時も肉にも喰らい付きたいという衝動が走った。
だけど怖かった。
共食いなんて。
人間じゃ無くなるような気がして。
妥協して血を舐めるに留まった。
案の定クセになってる。

「…」
戸惑っているオレを知ってか知らずか神父サマは手を叩き満面の笑みを向けてきた。
「そりゃあ良かった」
「…え?」
「マチクンが食べてくれるなら処分が楽です」
思いがけない言葉だった。

それからは早かった。
顔も知らない肉片に手を付け口を付け。
止まらなかった。
神父サマは楽しそうにこちらを見ていた。

翌朝
「あー。やっちゃった」
真知は頭を抱えていた。
流石に残った"食べかす"はもう跡形もなく処理されていた。

「残すと勿体無いんで 今度人肉用に冷蔵庫買いましょうね」

オレがあの時カニバリズムになったのは我慢の限界だったのか ただただタイミングだったのか
それとも

神父サマがいたからか。

結局オレはあんなに渋った割りに大した変化なく今日も神父サマと過ごしてる。

end

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