訪問客には御注意を。 1

今日は二人の男が来た。

最近来出して数少ない礼拝客の二人は正直綺麗とは言えない身なりで 自分達はホームレスなのだと言っていた。

「よぉ。今日は世話んなってるから俺等も飯持って来たぜえ」

男の一人がコンビニ袋を掲げて見せる。

「良いんですか?収入だって大変でしょう」
神父が聞くと
「大丈夫 大丈夫。臨時収入が入る予定なんだよ」

笑顔で言われ なら。と神父は袋を受け取る。
中には弁当が二つ。

「いつもいる坊っちゃんと食ってくれ」

もう一人の男が付け足す。"坊っちゃん"とは教会によくいる…と言うより住んでいる少年 神町 真知の事であろう。

「有難う御座います」
「大したもんじゃないけどな。じゃ 俺等はまた来るわ」

と教会に背を向け二人は歩き出した。

口元に笑みを浮かべて。



said:神父サマ

夜 マチクンに二人から貰ったお弁当の事を知らせると「じゃあそれを先に食べますか」と言い受け取ったお弁当をレンジへ持って行った。

着替えに行って戻ってみると コンビニのプラスチックケースから皿へ綺麗に盛り付け直されていた。

「取り合えず見た目だけでもと思いまして」
「えぇ。これだとコンビニ弁当だと気付けません」
「…安心してください。いつもは手料理です」
「ふふ。判ってますよ」

そんな会話をしつつ席に着く。

「あっ。お箸」

そう言ったマチクンは台所へ戻る。
勿論お箸を取りに。


ひょい。とその間に盛り付けられている卵焼きを摘まんで食べてみた。



あ― やっぱり薬盛ってますねぇ。
でも市販の睡眠薬みたいですから大丈夫そうです。

ついでに幾つか同じ様に摘まむ。


全部同じ睡眠薬ですね。


「神父サマ。箸忘れたのは謝りますがつまみ食いは止めてください」


怒られちゃいました。



「「いただきます」」

改めて挨拶をして食事を始める。

マチクンの方を見たものの警戒する様子は無く いつも通り箸を付けていた。

私が貰って来たのですがもう少し警戒した方が良いと思うんですよね…。





とまぁ睡眠薬に気付く筈もないマチクンは半分程食べた辺りでウトウトとしだし 数分も掛けず椅子に体重を預け眠ってしまった。


「思ったより強いんでしょうか…?」

それか即効性?

考えても判らないので
「取り合えず私も寝てみましょう」

外であの二人が待ち構えてるようですし。
まぁもし私や あまつさえマチクンに危害を加えるようなら…

殺しちゃえばいいでしょう。


ぱたり。とお皿を避け机に突っ伏した。








「眠ったか?」
「ああ。効いてるみたいだぜ」

程無くして二人が入ってくる。

まだ門しか閉めていないから庭にでも隠れて機会伺っていたのだろう。

「ロープで縛るか?」
「いや。さっさととんずらした方が良いだろうぜ」

確かに。
下手に縛ろうとした時点で死亡決定でしたね。

「どうする。礼拝堂行くか?」
「いや。あそこの物はでかすぎる。次で良いだろう」

…次…ですか。

「じゃあ…」
「二階に行ってみよう。物置か居住空間にでもなってんだろうさ」

おぉ。当たりですね。


カツカツカツ…と二人の二階へ向かう足音を聞きながらむくりと起き上がる。

「…先ずは

洗い物しますか」

食器洗うのもいつもマチクンがしてくれてますからね。





後片付けをしても二人は気付いたようではなかった。

注意力散漫です。


様子見をするため二階へ上がる。

…。
どうしてあんな足音が出るんでしょう。

開きっぱなしの扉は案の定一番手前の物置で目欲しい物も何もない。

侵入した痕跡を残さないためか荒らした様子もない。


まだ放って置いて良いでしょう。
彼らの前に…。

私は物置部屋よりまだ奥にある自分の部屋から毛布を持って椅子で眠るマチクンの元へと戻った。




マチクンが風邪引いちゃ困りますからね。

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