貴方が噂の

教会を開いてから神父サマがどっかへ行った。
捜していると台所で赤黒いシミの付いた 無惨にも中央から折れた箒と書き置きを見つけた。

[昨日の訪問者が暴れた際に折って仕舞った様なので新しいのを買ってきます。留守を頼みます。冫 神父]

神父サマ…。
そこは自分の名前書きましょうよ。"冴"の"冫(にすい)"は書きかけてるじゃないですか。
"梛"が面倒臭かったんですね。

自分の名前でしょうに。

昨日も真夜中に侵入者が有ったのは認識していた。
神父サマが対応に行ったからそのまま寝直したけど。


箒を買うならホームセンターか。
オレが初めて来た時廃虚と化したこの教会を綺麗にするのに随分とお世話になった記憶がある。
あれ以来この箒はよく愛用していたが大分脆くなっていた筈だ。
愛着が無いと言えば嘘になるがまあ仕方無いだろう。
手早くテープで纏めてゴミ袋に押し込んだ。

「…―っ――っ」
礼拝堂から微かに声が聞こえた。
余韻に浸っている内に誰か来たのだろう。

見るとそこには一人椅子に座ってる人がいた。
「…うっ……っ」
喋るというより泣いている様だ。

大人の様だが…。

「…どうしました」
放っておいた方が良いのかとも思ったが声を掛ける。
「少年…。逢えないのは辛いよ」
「……はあ」

何にだ。誰にだ。

「どうしてるだろう…仕事中なのか…?電話は迷惑か…?」

だから誰にだ。
コレどういう状態なんだ。


ヤバい。
オレ相談向いてない。

既に声掛けたの後悔してる。



その後涙ながら切々と語る男の人に微妙な相づちを打ちながら話を聞いた。

どうやら恋人に3日会ってなくて淋しくなったらしい。
普段は神父サマがこの話の相手をするらしい。


神父サマ…スゴイよ。
自分の名前を横着した人とは思えない位我慢強いよ。


「ただいま」
玄関から神父サマの声が聞こえた。

助かった!

そう思うや否や抱き付かれた。

うーんデジャビュ?

「真知ーっ!久し振りだな 一週間振り位か!?」
父さんだった。

「え…朝御?ってえ?真知って…君が真知君?」
「あ はい。真知はオレですけど…どちら様?」
会ったこと無いと思うんだけど。

「その方は例の学園の理事長サンですよ」
と神父サマ。

「申し遅れたが私 理事長の彩園寺 怜という。宜しく真知君」
目は若干まだ赤いがさっき迄とは別人の様にキリッとして紹介された。

今更だけど。

「怜 そんなに取り乱すなら電話位掛けてこいといつも言っているだろう」

父さんが仕事中みたいな声になる。


あぁ。父さんに会いたかったのか。

「だって迷惑になるじゃん…」

逆に彩園寺さんが涙目になる。
オレに構う父さんみたいだ。

「あの方は懺悔常習者なんですよ。いつも新倉サンの事ですけどね」
二人が話し合う中神父サマが教えてくれる。
「そうそうコレ。前のと同じのにしました」
気に入ってた様なので。と箒を取り出して見せてくれた。
「あ ありがとうございます」
受け取った箒は直ぐに自分の部屋に置きに行った。

戻ると父さん達は話が済んだ様だった。

「そう言えば彩園寺さんって父さんとどんな関係で…って恋人か」
そう言えばさっきまで会いたいと永遠聞いてたの忘れてた。

「おまっ…言ったのか!?」
父さんが焦る。
「あー…だって俺 この子が真知君だって知らなかったから…」
「怜。今日一日俺に触れるな。」
「え"っ!三日も待ったのに!?」
何やら父さんは怒ったらしく彩園寺さんがまた泣き付いていた。

「じゃ マチクン行きましょうか」
「そうですね」

オレは神父サマと二人を置いて昼食を食べに台所へ向かった。


何となく判ったのは 彩園寺さんより父さんの方が我慢強いと言うこと。

三日と一週間だけど。


end

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