教会訪問

「あの すいませんが…」
声を掛けられオレは振り向いた。
「最近再開した教会とはここでしょうか?」
その人は黒に近い紺のワンピースに頭に変わった被り物をしていた。
極めつけに神父サマと同じ十字架のネックレス。
何かの本で見たこと有る。

この恰好は…

「…シスター?」

箒を持ったまま固まってしまった。
教会だし背景には溶け込むが
「どちら様?」

あ いや。シスターか。

「〇〇教会からここの現状確認に来ました」
大きな鞄を持ったまま手を前に揃え軽く会釈される。
「あぁ。そうですか…」
現状について行けないオレはただただ言われるままにシスターを礼拝堂まで案内した。

「初めましてシスター ミー」
神父サマがいたので紹介した。
シスターの名前はミーと言うらしい。

本名かは謎だ。

「こちらこそ Mr.サエナギ。貴方が今のここの神父様なのね」
「はい」
シスターは髪の色は判らないが目の色が綺麗な空色で外人かハーフみたいだ。
発音も無駄に良い。
「キミはマチ?」
不意に聞かれたので驚いたが「そうです」と短く肯定する。
――。
「と言う事はまとめると 前に派遣した神父が音信不通になり なのに気付けば教会が再開されていた…しかも身元不明の神父サマがいると噂されているから事実確認に来た と?」
「Yes!その通りデス!」
キョロキョロとあちこち見渡しながらオレの後を付いて来るシスター。
長旅で腹が減ったと言われ何か料理を作るハメ…否 事になった。
因みに神父サマは近所の人と会話中。

「イイ神父様…なんですネ」
礼拝堂の方を見ながらシスターが呟く。
「えぇ。そうですね」
決して善人ではないけど。

「どうぞ。オレと神父サマ位しか食べた事ないんで口に合うか判らないんですけど」
あえて和食にしてみました。
味噌汁と焼き魚とご飯。
大丈夫かな。
「…」
「…どう…ですかね」
つい不安になって聞いてみる。
「…しぃ」
よく聞こえない。
「美味しいデスよっ この塩加減もサイコーですよ!バッチリドンピシャ ナンですかこの教会はっ!?楽園ですか?楽園なんですか?無邪気なショタロリに美味しい手料理 アノ得体の知れない神父様ってば狡すぎデスっ!!」
え?え?
誰コレ。
本当にさっきのシスターなのか?すっごい興奮してるけど。
とりあえず…

「だいじょうぶ?」
コテンと首をかしげゆっくりめに聞くと 「グフッ…ショタ萌え…」と言い残して逝った。

ダメだった。

オレを見て言ってたが断じてオレはショタと言われる歳じゃない。
変な人だ。
「おやマチクン。どうしたんですかその人」
「発狂後に気絶しました」
簡潔に説明した。
間違ってはいないだろう。
「それはそれは。変な人ですね」

シスターさん。
変な人に変な人って言われてますよ。

それから数時間経ち 教会に来てた皆さんも帰った頃 シスターは起きてきた。
都合により二階に連れていけないから気絶したまま放置してある。

「ン…寝ちゃったみたいでスイマセン」

正しくは気絶だが まぁ良いか。

「いえ。元気そうで何よりです」
「…ちょっと聞きたいんですが」
シスターが改まって声を発する。
このタイミングで調査でも始める気なのか?

「マチはいつもココに来てんデスか?」
「あー 毎日いますよ」
住んでるんで。とは一応言わないでおこう。
「あのロリショt…イエ。お子さん方も?」
「そうですね。家が近いんで よく遊びに来てます」
「そうデスか」
そう言ったきりシスターは質問を止めてしまった。

「判りました。ではこの教会はMr.サエナギにゆだねましょう」
「は?」
「それにミーが泊まるのは無理そうなんで帰りマスね」
唐突に話し出すシスター。
「マチ。報告は上手くやっときますから」
「は?え?」
「次は遊びに来ます。その時はまたヨロシク」

「Goodbye!」
手を振って暗くなった街へ消えていくシスター。
嵐の様に去っていった後ろ姿に手を振る事しか出来なかった。

「取敢えず教会は安泰の様ですね」
「わっ!神父サマ」
「彼女はまぁ大丈夫でしょう。殺さなくて」
「…それは良かったです」
「じゃぁ晩ごはんにしましょうか。支度手伝いますよ」
「ありがとうございます」


said:シスター


彼女は電車に揺られていた。
「何か隠してるようですね」
窓の外を眺めて微笑む。
「でもマチ 安心して下さい。

ミーはショタとロリとマチの味方デスから」

誰も見ていない中浮かべるその笑顔は マリア様の様に優しかった。


end

[ 15/40 ]

[*prev] [next#]
戻る


top


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -