兄弟です…?

「―――」
「―――」
下で神父サマが何やら話している。
多分相手は教会に祈りに来たお客さんだ。

あまり人と話すことを得意としないオレは そそくさと昼食を作りに台所へ行こうとする。
「あら 初めまして」
不意に神父サマと話していた人が声を掛けてきた。
20代半ばだろうか。
茶色い長髪を軽く束ねてラフな恰好をしている女の人だ。
「…初めまして」
一応 挨拶を返すと笑顔を返された。
うん。悪い人ではない匂いがする。

匂いって言っても正しくは雰囲気だけど。

「マチクン。おはようございます」
神父サマも振り返り声を掛けて来る。
そう言えば今日は朝食作ってから寝に戻っちゃったんだった。
「おはようございます」
いつも通り返す。
「そうそう。この人の紹介するね」
神父サマが手招きする。
珍しいな。
そう思いながらも二人に近付く。
「えーと … (確か)サトミさん。よく食材とかくれてる人だよ」
神父サマは隣の人の紹介をしてくれたが名前をちゃんと記憶してなかったらしい。
「知深です。よろしくね まち君」
さっきの神父サマの呼んだ名前を覚えてたらしいサトミさんの差し伸べて来る手に少し戸惑ったが手を伸ばして握り返す。
「はい。いつも野菜ありがとうございます」
貰ったという野菜はいつも美味しくいただいている。
「良いのよ。私の実家農家だから 凄い量送ってくるの」
貰ってもらえて助かるわ。そう言って笑うサトミさんは二児の母だそうだ。
見えない。
「ところで神父さん」
サトミさんが神父サマに向き返る。
「まち君って弟さん?」
…え?
「二階(居住スペース)から降りてきたし さっきの感じ的にここに住んでそうよね。けどまさか親子じゃないでしょうし…」
まさか赤の他人が住み着いてるとは思わないらしい。
しかしどうしたものか。
本当の事は言って良いのか?
だとしても何処まで?
オレが頭を悩ませていると神父サマが口を開いた。

「えぇそうですよ。この間から教会に住んでるんです。部屋は余ってますからね」
そうか兄弟って事にしとけば良いだけの事じゃないか。

殺人鬼の兄とカニバリズムの弟。

うわぁ…親の顔が見てみてぇ。
一般家庭だとしたら不憫すぎ。

その後サトミさんと別れてオレは昼食を作りに行く。
確か今切っている野菜もサトミさんがくれた物だったと思う。
トントントントントン…
随分慣れてきた料理の音が響く。

「おや。今日も美味しそうですねー」
ちょうどテーブルに料理を並べていると神父サマが入ってきた。
「じゃあ 食べましょうか」
最後に箸も並べ席につく。
「「いただきます」」

「流石マチクン。美味しいです」
「ありがとうございます」
いつもの様に向かい合わせで食事をとっていると
「そう言えば」
何を思い出したか神父サマが顔を上げる。
「最初は貰った野菜とかって毒でも盛られてんのかと思ってたものです」
「…は?」
まぁ私 毒に耐性有るから問題は無いんですけどねー。と冗談の様に喋る神父サマ。
しかし神父サマはこういう時は本気で話してる。
オレとしては有り得ない話だと思うのだが…。
狙われたことでもあるのか?
と言うより
「…オレは毒に耐性なんて無いんですけど…」
そう呟くと
「え?そうだったんですか?」
逆に驚かれた。

オレの中に 神父サマの謎がまたひとつ増えた。


end

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