ゲームの誘い

「ヒマなんで今日一日ゲームしましょう」
珍しく私服のままの神父サマが手をポンと叩き謎の提案をしてきた。
「…は?」
意味が理解できず聞き返す。
「神様が"今日は休んで良いよ☆"って言って下さいました」
にっこりと当然の如く理由を教えてくれたが

嘘だろう。

まず神様が"☆"なんて付けた御神託をすると思えない。
断言は出来ないが。
恐らく神父サマの気紛れだろう。
幸い人があまり来ない曜日ではあるが。
「…判りました。ヘタにストレス溜めて遊ばれ過ぎも困るんで付き合います」
別にグロいの見る趣味は無い。

手早く門前に"閉店"と書かれたプレートを掛けてきた神父サマ。
百円均一店で買って来たらしいが ここは店では無い。教会だ。

そろそろ神様から怒りを買っても良いと思う。

「で?何すんですか」
今更ながらゲームの内容を聞いてみる。
「それはですねぇ」一層にこやかに笑いかけてくる。

「ドキドキ☆殺人ゲームっ!」

聞かなきゃ良かった。

「無闇やたらに殺しに巻き込まないで下さい!」
今更だけどっ!
「いえいえ。今回は擬似殺人でお願いします」
「?」
一応言うが オレは殺人をしたことは無い。

ゲームを要約するとこうだった。
ルール自体は鬼ごっこに似たもので
神父サマが逃げる="被害者"。
オレが追う="犯人"。
範囲は柵内の教会の敷地。(室内は含まない)
で 捕まえ(勝ち)方は
神父サマに危害を加えること。
正しくは一発入れたりして怪我させる。

神父サマはオレの実力の程を知りたいんだと。
そんな理由で幾ら自信があるとは言え自分を攻撃させるとは。

でも 勝てば怪我させたところの血はくれるらしいから本気でかかろう。
何たってレアだ。

「じゃあ これから一分後位にスタートして下さいね」
また後程ー。と手を振って消えていく神父サマに反撃してこないか聞きそびれた事に一抹の不安を覚えた。

約一分。そろそろか。
あてもないので取敢えず教会の裏へ向かって歩き出す。
森のように木が鬱蒼と生えている所が有ったりなにもいない池が有ったりして意外と広い敷地内を捜すのは大変だと思う。

思った。

「いたよ」
目の前に。
木の上で寝ている神父サマが。
確かに捜すので十分位は経過してるかも知れないが。
「寝んの早っ」

「起きて下っ…さい!」
思いきり木を蹴る。
ズゥゥウン…。
と低く響き木が揺れる。
「おっと」
枝から落ちるところで身を返し綺麗に足から着地する神父サマ。
狸寝入りか…。
「ちゃんと寝てましたよ。さっきまで」
心読むなよ…。
「読んでませんから。何となくです」
……。

「大丈夫ですか?頭抱えて」
「…何でもありませんから」
「じゃあ始めましょう。私からは手を出さないんで安心して下さい」
確かに助かる。
「じゃ。行きます」

オレの基本の攻撃手段は脚だ。
腕よりリーチあるし怪我させやすいし 何より自分が手よりは痛くない。

立て続けに蹴りを繰り出すが
のらりくらりと避けられてしまう。
しかも笑顔で。
既に反撃どころか防御すらされてないじゃないか。

…。
現在午後11時。
「さっ ご飯にしましょうっ!」
チョー元気な神父サマと足腰立たないオレ。

結果は惨敗。

触れる事すら叶わなかった。
大分強くなったのにな…。
「晩ごはんは?」
鬼だ。
「き…のう の残り物。…あった…めればっ」
作るのも 買って来るのもヤダ。
「じゃ お願いしますね」
悪魔だ。
「早くして下さいねー」
鬼畜だ。
この人でなしが。

ずるずると神父サマを追って行く。
朝から確かに何も食べてないが。
寝たい。
「あっ…」
前を歩く神父サマが振り返る。
それに合わせて地面を見ていた視線を上げる。
「結構楽しめたんでコレあげます」
そう言って指差したのは 額の今にも血が流れそうな傷。
後半で折れた枝踏んで転けた神父サマが自分で作った傷だ。
「いいい 良いんですか!?」
「良いですよー。その代わり玉子焼きの追加して下さいね」
「はいっ幾らでも!」
疲れていたとはいえ突然の甘い誘惑に乗ってしまった。

次の日にも 朝から料理を作らされそのまま筋肉痛で死んだように寝てしまうはめになった。

神父サマのゲームの誘いは内容を聞いてからにした方が良いとつくづく思い知らされた。


end

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