朝食

二人の朝。

「神父サマー。食事の用意できましたよー」
二階でまだ寝ている神父サマに台所から声をかける。
応答なし。
一応犯罪者な訳だから普段から小さな物音ひとつで目を覚ます神父サマなのだが オレの声や足音は例外らしい。
何でも敵じゃないからだとか。
いくら靴を代えないからとはいえ足音まで識別出来るのは正直凄いとは思う。思うが…
「…起きて下さいよ…」

しょうがないからエプロンを外し二階へ向かう。
因に一階に教会としての設備(礼拝堂とか)があり プラス食事スペースと台所 それにシャワー室がある。
二階は居住空間。
何部屋か有るから一部屋ずつ主に個人で使っている。
後は空き部屋だったり一階に置けない物置だったりしている。

「神父サマっ!」
扉を開き呼んでもやっぱり応えはない。
しょうがなくベットで頭まで布団を被っている神父サマの上に股がり布団をひっぺがす。
ようやく見えた顔は幸せそうだった。
…どんな夢かは考えたくない。
多分真っ赤だ。
「起きてください」
頬っぺたをつねってみるとやっと「ん〜」と反応が帰ってきた。
折角の料理が冷めてしまう。
つねる力を少し強める。
「イタイ イタイー。起きるからぁ」
呑気に反論してくるが起きた様なので手を離す。
「おはよ。マチクン」
「…おはようございます」
満面の笑みだ。
寝巻きという名で着ている普段着は随分ラフだが似合っていると思う。
伊達だと言う眼鏡も今は掛けておらず 髪には少し癖が付いている。
幾分か若く見えるし 学生で通りそうだ。
世に言うイケメンとかモデル何てのに入ると思う位きっとカッコイイんだろうに…
「今日は夢見が良かったんですよー。あの泣き叫「ウルサイです。下行きますよ」…ハイ…」
性格が残念だ。

「では。いただきます」
「いただきます」
ちゃんと挨拶してから食事開始。
「今日も美味しいですねー。マチクンがいてくれて助かります」
神父サマの今日の食事は和食。
焼魚もあるが綺麗に骨だけになるので片付けが楽だ。
まったく。死体の末路と正反対だ。
神父サマは殺人鬼ではあるけど普通の食生活だし 味覚も量も人並みだから作りがいがある。
因に料理は本で知識は有ったが 作るようにはなったのは台所が有るこの教会に来てからだ。
今は趣味になりつつある。
「それは良かったです」
ステーキを切り分け口に運びながら返事をする。
肉は言わずもがな人肉だ。
しかし見た目は普通のステーキと変わらない。
やはりこの方が抵抗も無く食べられる。
白米や野菜にも手を付ける。
カニバリズムになってからは少しは食べる量も増えたかと思う。

なった頃は肉も結構な量あるし小食だったから肉しか食べてなかったのだか 神父サマに
『栄養偏りません?』
と聞かれそれもそうかと普通の食事も再開した。
まさか神父サマにそんなこと心配されるとは思わなかった。

「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
綺麗に空になった皿を台所に運び洗い出す。
「じゃ着替えてきますね」
そう言い残して神父サマは二階へ登っていった。

教会に来るまでこんな風に食事なんてした事なかったけど
「…悪くないもんだな」

次はデザートも作ってみようか。


end

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