タバコ

秋晴れのある日。

「何やってんの?」
呆れた様に言いながら私に近付いて来たのは最近この教会に住みだしたマチクンでした。
「何って タバコですが?」
手に持った吸い殻を見せながら答えると マチクンは溜め息をひとつ吐いた。
「見れば判る。じゃなくて 神父サマ。貴方は掃除しに来たんじゃなかったんですか?」
私の持ってる箒を指差しながらマチクンが聞いてくる。
確かに落ち葉を集めるために来ましたが…
「掃除ではないですね」
「え?そなの?」
マチクン困惑。
確かに箒持って 足下には落ち葉の山。
一応掃除したことにもなるかもしれませんね。
そうしとけば良かったか。
ま それは置いといて。
「これ貰ったんですよ」
そう言って取り出したのはさっき貰った紙袋。
中身は芋。
「え…それって」
「はい。焼き芋しようかと」
マチクンも後で呼ぼうと思ったんですが 必要なくなりましたね。
「…じゃあそのタバコは」
「あぁ。これは礼拝堂に来た人が忘れてったみたいで。火を起こすついでに久しぶりに吸ってみようかと」
「…はあ。神父サマタバコ吸ったんだ」
意外そうに見てくる。
それもそうですね。
教会来てからは吸ってませんから マチクンが見るのも初めてでしょうし。
「…エセ神父」
「なんでしょう?」
「返事すんのかよ」
「エセ神父ですから」

そんなのどかなある日の事。


end

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