シンデレラすとーりぃ
3
そんな会話をしている等とは夢にも思わない男が、料理を持って戻って来ました。
料理を並べるが早いか早速従者達は食べ始めます。しかし王子の…否、常に男装姿で男だと周囲に勘違いされている王女の、手が動きません。
「…気に食いませんかね」
男が恐る恐る伺いを立てると、ふ。と王子改め王女が令嬢キラーと名高い笑顔を向けます。
「食べさせてくれるかな?」
「…はい?」
突然の言葉に意味が分からず首を傾げる男。と、王女は包帯の巻かれた手をひらひらと振ります。
「手を負傷したから食器を持つのが困難なんだ」
言われて男は納得しました。自力で食べられなくはないのでしょうが相手は王子。最善は尽くすべきなのだろうと。
実際は王女であり、なのにこの程度の傷ならば決闘と聞けば嬉々として剣を振り回すくらい容易くやって退けるのですが、二人に結ばれて欲しい従者達が教える分けも無かったのです。
「どうぞ」
「うん、ありがとう」
そんなやりとりをしながら食事を終えた王女達。
「美味しかったよ。城に来てこれからも僕の為に料理を作って欲しいね」
「あ、有難うございます」
王女の言葉を社交辞令と受け取ったらしき男が照れ臭そうにお礼を返します。
料理を褒められ嬉しかったのでしょう。
「じゃ。城に行こうか」
「はい?」
腹も満たされ落ち着いた頃、王女が立ち上がりさも当たり前の様に男を誘いました。案の定男は何故だか分かりません。
「色を付けて返すと言っただろう?」
だから来い。と言われた男は、城で食材代を返すと言う意味に捉え、少し畏れ多そうにのこのこと彼等の後に着いて行きました。
「そんなに緊張する必要はないよ」
恐縮する男を気遣う王女ですが、その裏に、直に君も住むのだから。と言う意味が込められていると知るのは従者達のみ。
なので城に着くなり決闘を申し込まれ、ボロクソに負けるとか、介抱されながら彼女が王子ではなかったと知るとかは、まだ先の話。
類い稀なる行政の才を開花させた元民間人の王が、武術に長けた女王と添い遂げたと伝え語られるのは更に先の話。
end
BLリメイク(同題)
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