鳥籠の宴
9【スズメ】

尾長がぶつかったのは今しがたやって来たのだろう、金糸の脚だった。

「雀っ雀っ、」

その脚にすがり付き、彼の名前を繰り返す。

「雀、アイツおかしいのっ!狂ってるっ!早く逃げよっ、ねぇスズ…「鈴芽───スズメちゃん!」
「え…、」


泣き喚く足元の尾長が見えないかの様にその言葉を無視し、百舌鳥に駆け寄る金糸。
自分と同じ、スズメ、の名を呼んで。

「ねぇ、なんでそっちに行くの!?おかしいよっ、ねぇ雀!」

その場から動けぬまま、離れて行く金糸に手を伸ばし叫ぶ尾長。

「鈴芽ちゃん、今日は何を捕ってくれば良いの?鼠?蛙?蜂が良いかな?」
「じゃあ、"アレ"」
「あっ、蛇だね!」

穏やかな笑みを金糸に向けて、緩やかに持ち上げた腕。百舌鳥が指差した先を目で追った金糸は、尾長と居た時とは比べ物にならない笑顔を浮かべた。

───その二人が"自分"を見つめる。

「何を言ってるのよ雀っ!私は尾長よ!?」
「?…そんなわけ無いよ。尾長は綺麗な鳥の名前だよ?」

必死に叫ぶ尾長の言葉に、茶化すわけでも冗談を言っている訳でもないと物語る表情で金糸が首を傾げる。

「無理よ。金糸君はもうクラスメートを人とは認識できないわ」

アレを集めてくれたのは彼なのよ。と百舌鳥が尾長に近付き、さっきまで居た枯木の方を指差し続ける。

「───雀は、外見まで汚れてしまった貴女を尾長には見れないわ」

だから貴女ももう、ただの鳥の餌なのよ。




───さぁ。



「早贄の時間よ」

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