鳥籠の宴
8【早贄】
大きな木の足許に、百舌鳥は居た。ぽつんと一人立っていた。
鳥に餌を与える為に。
枯れた木に群がる鳥、鳥、鳥、
枯れた木に繁る人、人、人、
其れは原型を保っている者ばかりではないが確かに、百舌鳥にとっても、尾長にとっても、どれも見たことが有る顔だった。
───ずっと、同じ鳥籠に居たじゃないか。
枝に突き刺されたクラスメート達は啄まれ紅い葉を散らしていた。
「ア、ア…」
意識した途端に生温い空気が尾長に重くのし掛かり、その鉄臭い空気が息の仕方を忘れた尾長の気管を詰まらせる。
「ヴ…ゲホッ、ヴエ」
噎せ返り胃の消化物を吐き出す尾長。
「汚ないじゃないですか。汚さないで下さいよ」
彼女の事など目もくれずに木を見上げていた百舌鳥は、自分の吐瀉物にまみれた尾長の方を振り返りクスリと笑った。
「私莫迦だから何処に何を刺したか忘れちゃうんですよね」
だからいっぱい蓄えないと。そう言ってその場から笑い掛ける百舌鳥は酷く穏やかで、対称的に青冷めた尾長は立てない脚をばたつかせながら何とかこの場を離れようと、後ずさろうとする。
ドン。
「え、ぁ」
不意に、尾長の背中が何かにぶつかった。壁ではない。物ではない。
恐る恐る振り返った尾長の顔は、その正体を知った途端に明るくなった。
「雀っ…!」
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