約束の音楽会

次は百年後。
「見れそうにないな」
「いや、長生きしたら見れるかもよ」
そんな冗談を言い合った魔法の音楽会。
「百年後、また一緒に見に来よう、今度は夫婦として」
そう言ってプロポーズしてきた彼はどこかかっこよくて、雰囲気に乗せられ私は頷いた。

目の前で音楽会が始まる。
冗談だと思っていたプロポーズの言葉。
嗄れた老人は席に座り、その音に耳を向ける。
「素敵だ。本当に素敵だ」
彼の手がそっと手すりに置く私の手にかかる。
音楽が鳴る。
彼は聞き入るように体をソファに預け、瞼を下ろす。
手が冷えてる。年寄りには少し寒いだろうか。
百年後、そんなの無理だと思っていた。
一緒に聞くなんて。
彼は約束を守ってくれた。
あの時、浮かれた私は百年後の音楽会が一緒に見れたなら、今度は私から次の音楽会を一緒に見ようなんて言おうとか思っていたっけ。
でもそれは流石に無理か。
「君は本当に素敵だ」
最期なんだから音楽会見ろばか。
でも、うん。
相変わらず音楽会の魔法にかけられて彼がかっこよく見えてしまった。
縁側でぼーっと空を眺めるばっかの耄碌じいさんのくせに。
私ばかり惚れ直すのはシャクだから。
やっぱりこちらから約束をするのも悪くないかもしれない。
百年後の音楽会も見に来よう。
その後も、その後も。
見に来れないなんて事はないって、私が証明してあげるから。


end

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