狼くんのお話

ある町に狼の耳と尻尾をもった少年が現れました。
彼は怖がり臆病者、狼の群れから追い出されてしまったのです
町外れの女の子は彼を受け入れました。
狼少年は心優しい怖がりさん。
二人は仲良く暮らしていました。

森の動物や彼を探しに来た群れのニィサンとも打ち解け、彼は楽しい日々を過ごします。
しかしある日、ケンカもできない筈の少年が怪我をして帰ってきました。
少女にはなにも教えてくれません。
たまに遊びに来ていたニィサンも、やって来なくなりました。

そんなある日、一匹の狼少女が少女の家に押し掛けます。
少年に呼び出されたニィサンが襲われて瀕死の重症だと泣いて訴えるニィサンの妹。
妹は他の狼も被害に遭っており、そこには狼少年の姿もあったと言います。
しかし最近家に帰らなくなった少年。
妹は群れが心配で長居できず帰っていきました。

それから数週間後、意識を取り戻したニィサンはまた少女の元に顔を出すようになっていました。
彼は自分が怪我を負った経緯と、少年が消えた原因を話してくれました。

それは狼と敵対する、野犬の群れが近隣に現れた。という話でした。
縄張りを拡大するため、仲間を騙った呼び出しで、狼を奇襲しているのだそう。
一匹を引きずり出し、襲う。
ニィサンもその被害に遭ったそう。
そうして着実に数を減らそうとしているのだと突き止めた少年。
彼は立ち上がります。
かつての仲間のために。
野心家の犬達が人の村まで攻めいる前に。
「絶対帰って来るから」
そうして少年は出ていってしまいました。

今日も何の収穫もないままニィサンは帰っていきます。
今日も少女は少年の帰りを待ち続けましたが、少年が帰ってくることはありませんでした。

そして

村人に一人の少年が拾われました。
見た目に似合わない古傷だらけで、まるで虐待から逃げて来たようだと村人は言います。
特に頭とお尻、尾てい骨の辺りは深く抉れたような傷があるそうでした。
記憶のない少年を少女は引き取ることにしました。
少女は今日も待ち続けます。
狼少年そっくりの彼の、記憶が戻るまで。


end

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