バグ
――おじさん
――んー?何だい
――おじさんは正義のヒーローなんでしょう?
――うん。そーだね。みんなからは"勇者様"って呼ばれているね
――じゃあおじさんが手を合わせているこのお墓のヒトも正義のヒーロー?
――いや。彼は村人だよ。仲間はアッチで眠ってる
――えー。どこだか判らないよ
――あぁ。それもそうだね。あの花冠があるお墓が最後の生贄の村娘でしょ。そこから左に魔法使い 剣士 賢者 弓使い…。あぁ。見えないかな?
――うん。ベニスおじちゃんやカトレアおばさんまでは見えるけどお父さんは見えないもん
――そうかそうか。ここら一帯は被害にあったみんなが眠ってんだもんなぁ
――うん
――でもなぁ。みんなと同じお墓に眠ってるあの剣士。本当はアイツが"勇者様"なんだぜ?
――え?そうなの?
――そうそう。俺はそこにいただけ
――じゃあおじさんはだれ?
――おじさんか?おじさんはただのおじさんさ。運悪く通り掛かってしまった村人Aだよ。バグでラスボスステージに現れちゃったんだ
――そーなの?
――うん。
それからは俺が勇者様で彼は仲間のひとりって事になっちゃったんだ。だからもう村には俺の居場所はないしね
――そうなんだ
――そうさ。みんな俺の事は忘れちゃってんだから
――へぇ
――――!
――あっ。お母さんが呼んでる。じゃあねっ!おじさん
――うん。また明日
――本当の事を話したところで無意味か。勇者なんかに成りたくなかったよ。
娘だって俺の事を覚えちゃいないんだから。
end
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