ウサカラ

 学校にはまるで、エッグハントをしに行く気分だった。

 色とりどりの卵に手を伸ばしては「こんなもんか」と中身を見て愚痴る。
 そんな繰り返し。

 気が付けば周りからは「遊び人」「ヤリチン」のレッテルを貼られていたけどまぁ、それでも女の子は誘えたし。
 中身が期待した物じゃなくても、一時の快楽を満たすには問題もなかった。

 見た目は大事だ。
 探すのには派手でカラフルで目につく方がいい。
 中身はみんな似たり寄ったりで、カサ、と入ったお菓子を食べたらはい、おしまい。
 どのコを選んでも同じなら、それもそれ。
 選り好みをするのをやめたなら、寧ろ見つけたら手を伸ばせばいいから楽なくらいだ。

 と、言いつつ、周りがまだ卵探しに夢中なのに対して俺は飽きだしたりしてたここ最近。

 だってさ、拾える卵には限りがあって、途中からは中身を補充した見覚えのある卵がこれ見よがしに置いてあるだけなんだもん。
 他の奴等は中身さえ食えりゃいいから気にはしてないみたいだけど。

 残念ながら俺は見付けた卵を気紛れに他の奴にあげちゃうくらいには卵に興味を無くしてた。

 そうやって卵探しに飽きた奴が何をするか。
 その辺を飛び回る蝶に視線を持っていかれ、今度はその蝶が近くを通り過ぎた小さな花に目線を移す。

 で、花を愛でる趣味はないなーと、自己を見直して、最終的にはその辺の草を弄りだす。

「つまり俺は遊び飽きたガキに目をつけられた草か」
「ま、そんなとこ」

 同類とつるむのも、同性とバカやるのも悪くはないが、気移り激しい俺には長持ちしないものばかりだった。

 結果、趣向を変えてみたわけだ。

 現在いつも女の子を誘う時のヘラヘラ笑顔を向けているのは適当に捕まえたクラスメイト(男子)。

 尻軽女子に飽きて、だからと言って地味なコは警戒心が高い挙げ句に重いからメンドイと学んだ数週間前。
 じゃあ女教師に手を出すかっていうと、流石に違うなって思っちゃう肝っ玉カアチャンばかりだし。

「女好きだとばかり思っていたんだがな」
「見境がないだけだよ」
「自分で言うか」

 接点の無い俺に呼ばれた時に授業関連の伝言か何かだろうと勘違いしてのこのこ着いて来た彼は、俺からの火遊びのお誘いに引いていた。

「イケメンなのに彼女作らないのはホモだからじゃないかって噂されてたじゃん。違うの?」
「だからって俺にも趣味があるわ」

 オッケーが出た時点で致せるような人気の無い場所で話しているとはいえ、頭を抱えながらもホモ説は否定しない彼。

「お前よりはマシだと思っただけだ」

 同性愛者だろうと一途な方がいいと判断したらしい。

 うーん、そんだけお堅いとヤるの難しいかなぁ。
 でも知り合いは女の子に夢中だし、他はそもそもヤりましょうなんて質じゃないからなぁ。

「いや!それなら尚更相手がいなくて溜まっている筈だ!」 
「お前はまず世のぼっちに謝れ。」

 ふとイケるんじゃね?と拳を握って確信したら謝罪の要求をされた。
 解せん。

 俺だって世には右手とお友だちの野郎が多いことくらい察してはいるよ?
 でも俺は右手に楽させたい!代わりに腰に頑張ってもらう!

「俺が女の子の方やってもいいから!ね!」
「なんなのお前のその節操の無さ。怖いんだけど」

 もしかしてホモだからって女役は嫌なタイプ?とか思って譲歩して拝み倒したらさっきより引かれた。
 難しい年頃なのね。

「ケツ使うっていう拒否感ないの?」
「俺の原動力は好奇心だからね」

 性欲晴らせれば満足な仲間たちとは違って、ヤれりゃ良いわけじゃないのですよ。大事なのは新しささ。と力説したら深い溜め息を溢された。

「ねぇねぇ、因みにお前ってヤったことあんの?」
「…聞くなよ、そんなこと。……………無いけど」
「でもさ、興味はあるっしょ」
「…」

 無言。これは肯定かな。なら俺の手を取ってくれたら、女の子で培ったテクで最高の時間をお届けしちゃうんだけど。

「…俺はネコだ。だから抱くのはお前の方でいい」
「お、それって」
「その代わり!俺は付き合った奴としかやる気無いからな!浮気も無理!それでも俺をその気にさせられたら抱かれてやってもいい!」

 節操無しのお前じゃ無理だろうけどな!と最後にビシッと指を差された俺は、目から鱗がボロホロこぼれ落ちて最後の方の台詞は右から左へ通り過ぎていっていた。

 俺、誰かと付き合ったこと無いや。

 もうその事で頭がいっぱいである。

 さっきも言ったが俺の原動力は好奇心。

「よし、じゃあ付き合おう!」
「は?」

 新手のプロポーズ的な捉え方をした俺に対し、晴れて恋人になる彼からはすっとんきょうな声が上がる。
 もしかしてこう言えば俺が諦めると思っていたのだろうか。

 寧ろ好奇心に火が着いてしまったくらいなんだけど。

「これから宜しく、な?」
「…っ」

 手始めに一文字に固く閉まった唇にキスして彼の初めて赤くなった顔を拝むことに成功した俺は、今まで消化不良だった好奇心が満たされる予感がした。


end

[ 76/129 ]

[*prev] [next#]
戻る


top


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -