ようは会いたいだけ

"あ、暑い…外に出たくない、でも備蓄なくなった…何か買ってきて"
"残念だったね、俺は今大学に居るんだ。しかも帰りは遅い"

クーラーが壊れたおんぼろアパートで扇風機に吹かれながらスマホをポチポチやる俺は今、危機的状況に立たされていた。

俺の講義は本日はお休みの為うだうだやっているつもりが、記録的猛暑とやらでうすら笑う死神に干物になるまでのカウントダウンをされているのだ。

いつもならば俺が怠惰でも相方がアイスとか冷やし中華とか見繕って家に遊びに来てくれるのに、今日に限って神様は俺に自力でどうにかしろとおっしゃる。

"…シヌ"
"第一発見者にはなってあげるよ"

こいつはきっと空調の効いている講義室辺りで笑いながら返信を打っているんだろうな。
間借りなりにも俺もオトナなので確かにマジでヤバければどうにかもするけどさ。

なにも俺みたいな人間に鞭打つのがこんな日じゃなくても良いじゃないか。
昨日はまだ涼しかったじゃないか!

"因みにウチ来る?"
"この後のバイト、夜勤も引き受けちゃったから無理"

本当に何でこんな日に。
大学で出逢った俺達の家は真逆に有るわけで。となると必然的にバイト先も遠いわけで。ちょっと時間合ったから寄っちゃった、なんて展開は期待できないのである。

"俺も会いたいから、ついでにアイスの一つも引きずっていきたいんだけどね"
"アイスがなくても良い…せめて会いたい…"

相方からの何気無い嬉しい一言についこっちの本音も漏れる。

愛で腹は膨れなくても気力は回復するのに。
寧ろ自分の飯は疎かでも彼に会いには行けるのに。でも大学に会いにだけ行ったら怒られるんだよな。レポートの提出でもあれば別だけど。

"明日は時間合うでしょ?"
"あう"

変換もせずに即答で返せば少し間を置いてこれからバイトだからまた明日、としめに入る返信を頂いた。

これで今日の交流は終わりとか。
明日が遠い。

「あ」

そういやあいつのバイト先ってコンビニだよな。

大学跨いで向こう側だけど。

ちょっと遠い買い出しに行こうかな。


end

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