ママパパさん

5月13日は母の日である。

「…」
「…何よ」
「…いや、」

だから、と言うのもなんだが、目の前で味噌汁をすする"男"をつい意識して見ていたらいつ聞いても似合わない女口調で問い掛けられてしまった。

因みに彼は別に女の格好をしているわけでも、女になりたいわけでもない。

少しばかり複雑な関係となっている血の繋がらない子供こと俺に親らしく振る舞おうとした結果、家事=お母さんと言うイメージでこうなってしまったらしい。
口調しか変えないなら主夫ってことにすりゃ良いじゃないかと思ったが、良く言って真面目で順応性に欠ける彼を前にこれがジェネレーションギャップと言うヤツなのだろうと諦めた。

人生、慣れは大切である。

「なんか欲しいもんとかある?」
「…」

いつものことたが朝っぱらからローテンションな会話を弾ませる。

「…無いわね」

暫し間を置いてのこの解答。真剣に考えてくれていると思えば怒る気もないが、短気な奴なら匙を投げるかキレるかしていそうだ。

「お前が居てくれれば満足よ」
「っ、」

でもふっと仏頂面だったのを弛めたばかりかこの台詞。ド天然はこれだから困る。
女口調を無視すればイケメンである。タラシである。
家族として仲が良好なのは大変有り難いが、マザコン?が悪化してしまう。

顔だって悪くないんだから外で女性陣にクールとか評されてモテてそうだよな。
前に聞いたらそんなこと無いとか言ってたけど絶対鈍いだけだから。

でも子育てに忙しいから彼女は作らないって言ってたのは悪くない。俺とこの人の空間に入ってきて許容出来るヤツなんて想像できないくらいには俺は狭量なのだ。

…まぁ、彼に謎のお母さん役を辞めてもらう良い機会にはなりそうだけど。

「じゃあ6月15日までには考えといてよ。今月の方は適当に用意するから」
「?分かった。じゃあ、俺は先に出るぞ」
「うん、いってらっしゃーい」

母の日はできるだけ一緒にいられるプランを考えようと心に決め、仕事だからと"お父さん"口調になった彼を見送る。

好意を分散させるのが苦手な俺としては大事なヤツってのが引っ括めて一人に集約されるのは凄い助かるんだよな。
でもさ、俺もそこそこ育ったわけよ。
いつまでもお父さんとかお母さんとか子供とか。そーゆーのは終わりにしてほしいと思うこともあるんだよね。

反抗期?んー、分からないけどなんか違う来はする。
この感情に名前を付けるなら何て付ければ良いんだろう。

「誕生日にクリスマス、来年はバレンタインにも作りたい」

自分の望みは分からないけど彼の喜んでくれそうな事は分かるつもりだ。
だからプレゼントを贈る習慣は多いし、まずは目先の母の日だな。


end

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