とある生徒会の五周年

「会長、これを」

とある生徒会室。自席を立ち神妙な面持ちで会長の前へとやって来た副会長は、その手に持っていた一枚の書類を会長に差し出した。

「…そうか。もうこんな時季か」
「はい」

書類を受け取り、その見出しに目をやった会長が静かに口を開く。
副会長の背後には、自席に座りただじっと二人の会話を静観する会計と双子の庶務の珍しい姿が目に入った。書記は相変わらず静かだが、心無しそわそわしている感がある。

「なあ、」
「何でしょう」
「発表しなくて良いんじゃないか?あいつ等このままにした方が無害そうだし」
「「「!?」」」

仕事中ですらこんな光景を見たことはない。と会長は大人しく着席する面々を見渡し息を呑む姿に思わず溜め息を溢す。
走り回らず、纏わり付かず。会長としてはかなり平和的な状況だ。
これで期日までに仕事もこなしてくれるなら言うこと無しである。

「生徒会会長ともあろう方が何私情挟んで職務放棄しようとしているのですか」
「うぐっ…」

背後で待機する役員達の緊張とは打って変わり冷静な副会長が会長を叱咤する。

その釈然とはしないが的を射た言葉に会長は返す言葉はない。

「貴方が発表するまで"待て"の彼等に私達の仲を見せ付けましょうか?」

私はそれでも構いませんよ?と目を細めた副会長が会長の顎を拭い互いの視線を合わせる。
机分しかなかった距離が次第に近付き、

ガタンッ

椅子を弾く音と共にその距離は離れた。

「か、開校五周年!祝典企画会議を始める…!」

副会長の手を振り切り勢いよく立ち上がった会長が宣言すると共に、五人の役員が持ったクラッカーの音が生徒会室に谺したのだった。

「会長、開校ではなく開設ですよ」

……

「副会長、ズルイ…」

待てから開放された書記が素早く会長の背後に回り椅子に座る会長にがっしりと抱き付く。

「もー。ホントにチューしちゃうのかって焦ったよぉ?」

プンプンと態とらしく副会長に怒る会計の視線は、そんな危機的状況を作った会長に鋭く向けられている。

「危うく会長を閉じ込める算段立てちゃう所だったぁ」
「…」

冗談めかして言う会計だが背後に漂う不穏な空気の淀みに会長は冷や汗を垂らさずにはいられなかった。

「安心してください、一人占めする気はありませんよ」

まだね。とにこやかに言い退ける副会長は本当に会長をからかっただけらしく、ちゃっかり自分も鳴らしたクラッカーの処理に勤しんでいる。

「かいちょー何やるー?」
「かいちょー何着るー?」
「…おい」

クラッカーを鳴らした後は終始会長の周りを彷徨いていた双子が、今は左右から会長の頬をつついている。
一応企画の話題に触れてはいるが、最早会議中の様相が無いことは明らかだった。

「まぁ椅子に座ってお堅く話し合い!だけが会議じゃないさぁ。気楽に気楽にぃ」
「だからって人の机に座るな」

弛く笑う会計がよいしょ、と当たり前の如く腰掛けたのは会長の机。勿論書類なんかは避けて座っているが、そう言う問題ではないだろう。
当然会長は退くようにシッシッと手でジェスチャーするが、猫に猫じゃらしを与えたかのようにパシッとその手を捕られ逃がさないとばかりにその指をからめられてしまっていた。

「まったく会長は。遊んでいないで進行してください」

ヤレヤレ。と会長に詰め寄るのは後片付けの終わった副会長。
ただし会長が集られている現状を理解できていないわけはない。

「んじゃ助けろよ!」
「私にそんな不用意なお願いをして良いのですか?」
「くっ…」

助けて貰った見返りを考えその先の台詞が続かない会長は、相変わらず彼等に為すがままにされるしかないようだ。
ここで無償で助けて当然と言う態度を示さない辺り、会長の俺様気質と言う主張は一蹴されても仕方のないことだろう。

「取り敢えず企画だな、企画。何か案は有るか?」

慣れ…基、諦めた会長が現状放置のまま口を開く。

「五周年なんだからぁ、5〇(ピー)なんてぇ、」
「却下」
「役員は六人ですからね」
「そう言う問題じゃない」
「「かいちょーの女装五変化ー」」
「何で女装限定なんだよ!?却下」
「zzzzz」
「書記、寝るな。」
「…ん」

空いている方の手で頭を抱える会長。彼等に聞いてこうなることは察していた筈なのに。

「こう、全校生徒が楽しめるようにだなぁ…」
「開校ではなく開設ですがね」
「皆で楽しくには変わりないよねぇ」
「ん」
「「ここまで来れたのは皆のお陰なんだしね☆」」

いつも通りの彼等。

「ではではそろそろ、真面目に会議を始めましょうか」
「「「はーい」」」
「ん」
「始まってなかったのか!?」
「あ、体勢はそのままで大丈夫です」
「真面目はどうした!」
「「変えても?」」
「大丈夫です」
「「「はーい」」」
「いや席戻れよ…って、おま、どこ触って」
「会長、R指定はバレないようにお願いしますね」
「何の話だ!?ひゃうっ、そんなとこ…っ」

「…取り敢えず。
『お陰さまで当サイトは9月18日をもちまして開設五周年を迎えることとなりました。度々足を運んでくださる方も初見の方も大変有難う御座います。まだまだ至らぬところも多い鈍足サイトですが六年目も宜しくお願い致します!管理人:最原』
…とのことでした。サイト内の色んな所で恋模様を繰り広げたり無かったりしているようですが、拍手在中の私達のことも宜しくお願いしますね」

「俺達も進展したいよねぇ」
「「したいしたい」」
「会長、イイ?…ね?」
「ダメだから!お前らの美徳は寸止めだろう!健全に過ごせよ未成年!」
「18禁展開がダメなのは年少者だよぉ」
「俺等はその年少者だ!」
「高一から生徒会入りしても五年も経てば解禁ですよ」
「俺等高校生だから!何年たっても高校生だから!」
「そもそも、ダメ…見る側の、問題。こっち、レッツ、ファンタジー…」
「「要はヤられるか否かは会長次第だね☆」」
「くっ…結局こんな終わり方か!」

「ま、平常運転ってことで♪」


end

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