決戦はハロウィンの日に

クラスが同じになるのはこれでもう何度目か。
異常なまでの腐れ縁のお陰で何だかんだ良好な仲を築いている俺とコイツ。

ただ、一番の親友とお互いに言えるまでになったと言うのにも関わらず、俺にはそんな親友に明かせていない秘密が二つもある。

一つは、俺がコイツに恋心を抱いていること。

そしてもう一つは、俺が人間じゃないと言うこと。









「てことで、31日はうちに来い」
「は?」

目の前に座るコイツの髪を弄りながら俺様と名高い俺は誘い…と言うよりも決定事項に近い台詞を投げ掛ける。

「無理」
「良いから来い。仮装は必須だからな」
「人の話聞いてたか?……はぁ。仮装必須ね。ならまぁ良いけど」
「よし」

いつもながら二言目にはため息混じりに了承するコイツ。

しかし、はて。仮装するなら良いとはこれ如何に。
ハロウィンの誘いではあるがそんなに行事を楽しむタイプだっただろうか。

とは言え、かく言う俺も楽しみで仮装を言いつけた分けじゃない。
人間じゃない、更に正確に言うならば吸血鬼である俺はハロウィンの日は血が昂り牙が伸びたり目が紅くなったりするので人間の擬態が出来なくなってしまうのだ。

だから本来の姿を晒しても疑われない様に仮装を建前にしておく必要があったのだ。

幸い大きく人間と変わる姿はしていないので特殊メイクよりは変化は乏しいその姿ならば、まぁ誤魔化しきれるだろう。

普段は学校も休み家で大人しくしているのだが…正直飽きた。
今年のハロウィンは休日なので仮病を使う必要もない。

と言うことで丁度良いからコイツを誘うことにした。

なに。正体がバレたら好都合。
血のひとつでも吸って"こちら側"に引き込むだけの事。

寿命の違いも解決する上に嫌でもコイツは俺から離れられなくなる。

そんな事をしたら嫌われるかもしれないが、最後はいつもみたいにため息混じりに折れてくれるだろう。

だから寧ろ正体がバレる事を期待して誘ったと言っても過言ではないのだ。
そう。俺はコイツの良心に付け入って既成事実を作ってしまおうとしている。



我ながら最低だ。









………
……………



ソイツとクラスが同じになるのは初めて出逢った中学から数えてかれこれ五回目。
高校二年生をしている俺等からしたら早い話がパーフェクトだ。

何なら席順もほぼ隣か前後。
そんな腐れ縁のお陰で親友の座を築いている俺とソイツ。

ただ、一番の親友と言える相手にも関わらず、俺には明かしていない秘密が二つある。

一つは、俺がソイツに恋心を抱いていること。

そしてもう一つは、俺が人間ではないと言うこと。









「てことで、31日はうちに来い」
「は?」

目の前に座るソイツが俺の髪を弄りながら誘い…と言うには拒否を許さない口調で言い放つ。

「無理」
「良いから来い。仮装は必須だからな」
「人の話聞いてたか?……はぁ。仮装必須ね。ならまぁ良いけど」
「よし」

いつもながらこちらの意見を丸無視して話は展開される。
今回ばかりは断固拒否しなくてはならない…と思ったのだが、ソイツが言った仮装必須の言葉にそんな決意は脆くも崩れ去った。

しかしまぁなんでそこまで仮装に熱意を燃やすのやら。
いくらハロウィンに誘ったからと言って、浮かれ立ってハロウィンムードの町中を闊歩する分けじゃないだろうに。

……まぁそれはそれで断固拒否するだろうが。

しかしあまりにも好都合な提案なので敢えて言及はするまい。
正体がワーウルフである俺は満月を見ると殆ど狼と言うべき状態に姿が変貌してしまう。
それは夜に限った事だから問題はないのだが、ハロウィンの日も似た様な効力があるらしく狼そのものにこそ成らないまでも、狼の耳や尻尾が生えてしまうのだ。

流石に町中を敢えて晒して歩く趣味はないが、寧ろ力の入った仮装の方が"らしい"だろう。

普段は学校も休み家にいるのだが…丁度退屈していたところだ。
どうせハロウィンだ休日だと言って特別用事が出来る分けでもなかったのだから。

と言うことで丁度良いからソイツの誘いを受けることにした。

生え際さえ見られなければ正体がバレる事もないだろう。
もしバレたら……。
俺が人間じゃないとソイツが知った日には、



その時俺はどうするのだろうか。









………
……………



「よう」
「おう」
「お前、そんな服…つかマント態々用意したのかよ。仮装必須って言っていただけあるな」
「寧ろお前は力が入ってんのか分かんねーよ。その耳や尻尾のクオリティのわりに普段着ってどう言う了見だ」
「カラコンやら付け八重歯まで仕込むお前と比べるな」
「んなこと言って獣臭まで漂わせてるお前の力の入れどころのが分かんねーよ」
「はぁ?そんな力入れてねぇし寧ろお前こそ血生臭いんだけど」
「………」
「………」
「……取り敢えずその耳触らせろ」
「間違っても引っ張るんじゃねぇぞ」



end

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