あけましたらおめでとう
とあるところにちょっとおバk…基、元気な"ウマ"が居りました。
彼は馬ですが、ただの馬ではありません。2014年の干支、午なのです。
「羊ー!お前!次の干支になれ!」
午は焦っていました。
干支になってからも遊び呆け、気が付けばもう12月。
当初は適当でもすぐに見付かるだろうと高を括っていた次の"干支"の譲渡相手捜し。
羊であれば誰でも良かったのですが、彼等は皆警戒心が強く、騒がしさが売りの午は近付こうとしては逃げられを繰り返していました。
初対面の巳から「干支やらない?」と誘われ、よく判らないまま二つ返事で馬から午になった彼からしたら、羊のガードの固さは未知の領域でした。
そして。
遂に接触を果たしたのは午のちょっかいを受けてすら眠り続ける、マイペース過ぎる羊でした。
「なー羊ー!」
「………………ウルサイ」
部屋に乗り込んだ不法侵入午に一言呟いただけで炬燵に潜り込む羊。
「なぁー。起きろよぉー。一時的にちょっと名前が未になるだけだからー」
炬燵に沈む羊を引き摺り出し、夢の国に旅立とうとするその頬を叩く。
「!?」
その瞬間、羊が飛び起きました。
真冬の外から来た午。
いくら暖房の効いた部屋に入ったとは言えまだ午の手は冷たい………と、羊は思っていたのです。
「温い……」
確認する様に手を触り驚く羊。
「あー俺、すぐ体温上がるんだよ。落ち着き無いせいかな?」
羊の疑問にきょとんとしてから答える午。
「頼むよ!俺お前しか頼れないし!俺に出来ることなら何でもするから!な?」
「へぇ?」
その言葉に羊がピクリと反応しました。
その目は草食に似合わない、まるで肉食動物の様です。
「正確には未になって、どうするわけ?」
「別に特別する事は無かったぞ!何か干支パワー?証?そんな感じのを引き継いで一年持っていれば良いらしい!」
「なら寝ててもオッケー?」
「平気平気!」
「じゃあ引き継いであげる」
「マジ!?サンキュー!!」
羊の了承に喜ぶ午。
嬉しさのあまり抱き着いてくる午をなだめながら羊は聞きます。
「引き継ぎってどうやんの?」
「え!………えと、それは……」
「……まさか、」
急に歯切れの悪くなった午に羊は怪訝そうに尋ねました。
まさか引き継ぎ方が判らないのか、と。
「いや分かるぞ!その…な、チュ、チューするんだと」
「………キス?」
「そ、そう。触れた口からパワー的な物が移動すんだって…蛇が」
そこで急に不機嫌になった羊が午に低音で尋ねます。
「蛇ともチューしたんだ?」
「ま、まさか!チュ、チューなんてしたこと無いし!巳だった蛇とは握手しかしてないくらいだし!」
午が叫ぶ様に訂正すると羊の気分は良くなりました。
そして思いました。
あ、こいつバカだ。と。
恐らく体のどこかしらが接触すればいいのでしょう。
蛇と握手で引き継いだと自らが言っているというのに、羊に引き継ぐためにはキスする必要があると信じきっている様です。
なんと好都合なのかと羊は内心ほくそ笑み、見知らぬ愉快犯な蛇に感謝しました。
「じゃあチューしなきゃな。それとも俺とはしたくない?」
「嫌じゃない!けど初めてだから…」
「大丈夫。リードするから」
「う、うん…」
すっかり大人しくなった午に主導権を得た羊が畳み掛けます。
「まだ午年だもんな。日付が切り替わる時に干支だって引き継がないとな?」
「あ、確かに。」
自分は冬眠するからと蛇から秋の終わりには引き継ぎを行った事などすっかり忘れた午は羊に流されます。
「んじゃ、何でもするんだよな?引き継ぎまでうち居ろよ。んで俺が寝る時は湯タンポになれ」
「は、え?」
いそいそと午を抱えて炬燵に潜り込む羊。
午の温かさを気に入った羊は、そのまま慌てふためく午を無視して眠ってしまいました。
午は午で一通り焦り、疲れてそのまま寝てしまいましたとさ。
めでたしめでたし。
end
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