円満家庭にようこそ
俺には恋人がいる。
そいつの家は毎年桃の節句を盛大に祝うらしい。
とは言え俺、の相手は同じ男である。
つまるところ彼の妹のイベントなのだ。
何かと妹の世話をしていると友人時代から聞いてはいた。
だから今年も3月3日は妹優先かな、と思っていた俺からしたら"一緒に祝おう"との誘いは嬉しかった。
「────で。意気揚々と来てみたら、」
俺は訪問早々彼の両親に拉致られた。
そして
「なんだよこの格好!?」
思わず叫んだらその場にいた全員が振り替えって口を揃えた。
「「「お雛様」」」
そう!
俺は何故か、何 故 か お雛様のやたら本格的な衣装を着せられたのだ。
因みに彼は嬉し恥ずかしお内裏である。
これはウケ狙いと取るべきか!?
(表向き)友人として来た俺にド頭で十二単を着せた理由が見付からない!
そこで「カワイイー♪」と謎の女子目線で写メを起動させる妹よ。
兄を呼ぶ前にお前がコレを着ろ。
「だって私たち三つ子だもん」
って心を読んで反論するなよ。
良いじゃないか三人ともお雛様で。なんで三人官女に甘んじるんだ。
「えー三人官女の方が好きだし」
「お兄ちゃんの隣とか。ねぇ…」
「ヤダ。」
「!!」
「…」
もう少し自重しろよ妹達。
お前らの兄ちゃん俺の隣で地味に凹んでるぞ。
「お兄ちゃんだって隣はお嫁さんがいいよねー」
「そうだなぁ」
「!?」
オイコラ妹の今の発言なんだ!?
あれか。男友達より彼女さんにお雛様してもらいたいだろってだけだよな。まさか妹にマジの関係バラしてないよな!?
お前のは同意はどうゆう意味を含んでいるんだ!?
「あらぁもう打ち解けているみたいねぇ」
「何より何より」
そう言って来たのはさっき着付けの時にお世話になったご両親。
二人とも何かに着替えているが…
「私達は右大臣左大臣よぉ」
「因みにお母さんが左大臣」
「やぁだパパったらぁ」
イチャラブした随臣だった。
もうご両親にお雛様とお内裏様してもらえよ。
「やぁねぇこの子ったら。私達そんな年じゃないわよぉ」
と、今度は彼のお母様に心の声への返答をもらった。
「それにこの方が動きやすいしね」
にっこり笑ったお母様。
引き返す先には台所。
「この日は毎年ちらし寿司なんだ。君も食べて行くだろ?」
「むしろお泊まりよねぇ」
「勿論!」
「え、ぁ…お世話になります」
二人からのお誘いに先に答えた彼に乗っかり頭を下げる。
予定には無かったんだが…まぁラッキー。
「あっ、手伝います」
「あら有難う。でもその格好は運びづらいでしょう?」
「う゛…」
「妹達の相手してちょうだい」
「わかりました」
「「「やったー!!」」」
「おわっ、」
引き返すなり三人官女に集られた俺は知らない。
右大臣とお内裏が良い嫁だとか当たり前だとか話していたことを。
end
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