奇人と甘えた

「琉依ー」
「んん?なにカナ??」

おれが呼ぶと自分の部屋から顔を覗かせた琉依。

ちょうどよかったーと白衣姿で出てきたその手にはハート型の…箱?

何て言うかラッピング方法とか、形とか、似てる。と思った。
何にかって聞かれればおれが今後ろ手に持ってる物に。

ふと今日と言う日も鑑みて思い至ったアイテム。

でもまさか琉依も用意してくれたのかな?


…………チョコ。


「今日はハッピーハッピーバレンタインだネ☆」
「!!」

期待を肯定するように勢いよく差し出されたそれに思わずビックリ。

だって、バレンタインって女の子が男の子にチョコを渡す日でしょ?
てことはおれは女の子じゃないけど位置的には渡す側かなって思ったし。

それにここ数週間ずっと黒魔術か何かでもしているのかと不安になる変な言語とか謎の煙とかしか部屋からは確認できなかったから。


なんだ…チョコを作ってくれていたのかぁ。
見た目も匂いも普通だし一安心どころか気分上々だね。

「ありがとぉ」

つい嬉しくて受け取ろうと出した手と共に自分が隠していたチョコも出してしまう。

「おやおや?空憂くんのソレはもしやチョコレート??」
「え?あ、そうそう。琉依に渡そうと思って」

忘れかけていたおれからのチョコも交換する形で渡す。

「いやぁ感謝感謝雨霰だョ」

チョコを小脇に挟んでやたら大振りな固い握手をして来た琉依。
喜んでくれた事が嬉しくて別れて自分の部屋に戻ってからも暫くラッピングを眺めていたおれは知らない。

琉依が箱に並べられたトリュフを見ながら

「さぁて空憂くんがくれたチョコには何が入っているカナ??カラシ?ワサビ?はたまた媚薬??きゃー♪」

罰ゲーム並みの内容を想定してテンションが更に上がっていることも

「むむ………セーフ…」

有りもしないハズレに胸を膨らませ一人でロシアンルーレットしていることも

「素直にうまうま。全部アタリとは豪気な。…空憂はもう食べてるカナ?

琉依くんお手製催淫剤入りチョコレート」


なんかとんでもない薬が入れられてて食べた数分後には琉依の元に駆け込んでいることも。


end

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