02.


家に帰ってからも何をしていても告白現場で見たことが頭に焼き付いていて、もやもやする。あの女の子はどんな気持ちで告白をしたのだろうとか、どれくらい狛枝が好きだったんだろう、とか。それに、狛枝が言った好きな人がいるということも反芻している。家の方向も近いから登下校一緒にしている私は、狛枝の邪魔になっているのではないか。あるいは狛枝のことが好きな女の子達に疎まれているのかもしれない。小学校と中学校が同じだった私は狛枝がモテることをそれとなく知っていたが、高校生にもなると大人らしい恋愛になる(雑誌でたまたま読んだだけの知識だが、そうなる)らしいからその人を独占したいと考える子も少なくはないはずだ。今まで考えたことはなかったが、もしかしたら距離を置くべきなのかもしれない。





「名前おはよう」

「お…おはよ」

家を出てから距離を置こうと考えていた狛枝にいきなり会ってしまった。でも、やろうと決めたからにはやらなくては。

「あ、あのね先生に早く来いって昨日言われたから、先に……」

「今日はテストの日だから早く行くの学校全体で禁止じゃなかった?」

あっさり論破されてしまった。なかなか私にしては良い言い訳が言えたと思ったのに、流石狛枝だ。…ん、ちょっと待てよ。確か狛枝は、今……

「テスト!?」

思わず周りも気にせず大きい声でシャウトしてしまった。

「?今日は学期末のテストの日だよ。まさか忘れてたとか?」

その通りだ。すっかり忘れていた。狛枝は勘が鋭すぎてよく戸惑う。

「そ、そそそんなわけないじゃん」

「そう?ならいいけど。それより名前、さっきボクから逃げようとしてたよね」

突然言われてびっくりした。凄い。なんて観察眼を持ってるんだ、と他人事のように感心してしまう。もう誤魔化せない気がしてきた。核心に触れるようなことを言わなければいいか。

「えっと、女の事情みたいなものがあるんだよ」

狛枝に意味がわからない、というように小さく笑われた。

「もう学校に着いたけど」

そうか。さっき笑われたのはそういうことだったのか。ボクから逃げようとしてた筈なのに結局一緒に学校来ちゃったね、っていう狛枝の心の声が聞こえてきた気がした。何も勝負をしていた訳じゃないけれど、なんだか負けたような気がして少し悔しかった。




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