01.



「好きです、付き合ってください」

この声が聞こえたとき、耳を疑った。どうやら私は告白現場に遭遇してしまったようだ。宿題のプリントを教室に置き忘れたことに気付き、いつも一緒に帰っている子達に理由を言って急いで取りに戻っている途中の事だった。この声が聞こえたのは隣の教室からだった。だから私には直接的な被害は無く、無事にプリントを取ることが出来た。そのまま帰ろうと思ったが、告白現場にいる人達には悪いと思いながらも少しの好奇心で隣の教室を覗いてしまった。丁度角度的に見えたのは告白をしている張本人の女の子。私は他のクラスの人をあまり覚えていないので知らないが、可愛かった。いかにも純粋そうで、真面目な印象をうけた。私が男だったら付き合うかもしれない。一方の男は角度が悪かったのと夕日が丁度当たっていて顔が見えなかった。目を凝らすが、見えない。

「ごめん」

男の声が聞こえた。この声は…狛枝だ。いつも一緒に帰っている組だから、声でわかる。確かに今日は用事があると言って一緒に帰れないというのを聞いたことを今思い出したが、まさか、理由が呼び出しを受けていたからだなんて。流石にこれ以上聞くのは本当にたちが悪いと思ったが、

「…す、好きな人がいるの…?」

という女の子の震えた声が聞こえて、思わず応援したくなって聞いてしまった。これで狛枝がいないって言えば、女の子にはまだ望みがある。狛枝の返事に耳を澄ます。狛枝は少し躊躇った。

「…いるよ」

狛枝に、好きな人がいる…?初めて聞いた。でも、これで女の子は諦めるしか無くなってしまった。あれだけ勇気を振り絞って告白をしたのに、こんな結末って。

「そ、そっか。呼び出しちゃってごめんね。聞いてくれてありがとう」

と、早口で言った後女の子は私がいる側じゃない出入口から走って出ていった。声がずっと震えていた。きっと泣いていたんだろう。片方が好きでも報われないって凄く辛いんだろう、なんて考えながら足音をたてないように足早に立ち去る。私は恋をしたことがないから、よくわからないけど。




下駄箱から外に出ると、寒い中をずっと待っていてくれたらしく、いつも帰っている組の日向と七海ちゃんが待ってくれていた。いつもは狛枝もいるが、まだ教室にいるだろう。

「待ってくれてたの?ありがとう」

と私が言うと七海ちゃんは

「待つのは嫌いじゃないから私は全然気にしてないよ」

優しい笑顔でそういってくれた。本当に毎回この笑顔を見る度に天使だと思う。心の底から崇めたくなるのと同時に抱きしめたくなる。そんな天使な七海ちゃんと対象的に少し不機嫌そうな日向には

「名前、プリント取りに行くだけで時間かかりすぎ」

と言われてしまった。あはは…と適当に流した。流石に狛枝の告白現場覗き見してましたとは言えない。言ったらあの女の子が可哀想だ。狛枝はともかく。

「これで人数揃ったわけだし、帰ろっか」

そうだね、と歩みを進めた。
私は日向と七海ちゃんと話している間も狛枝と勇気を出して告白したのに断られた女の子の事が頭から離れなかった。






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