03.


狛枝とは別のクラスだから、狛枝とは廊下で別れた。教室に入ると、既に私の後ろの席の日向がいた。

「日向って好きな人いるよね?」

朝の挨拶なしで単刀直入に言ってみたら、

「おま…っ、い、いないに決まってるだろっ」

日向は顔を真っ赤にして誤魔化した。けれど表情と言葉が合ってなさすぎて思わずふきだしてしまった。

「あははは!ひ、日向、嘘つくならもっと上手くついてよ」

「…わ、悪かったな」

笑いすぎてしまったか。呼吸を落ち着かせて笑うことをやめる。日向が顔を赤くしたまま、うつむいて拗ねたような仕草をしていた。日向はちゃんと話せば答えてくれるいい奴だから、早速本題に入ろう。

「ごめんねー日向。じゃあさ、その好きな人って誰?七海ちゃん?それとも七海ちゃん??」

「選択肢七海しかないってどういうことだよ…」

「え?私は日向が好きなのは七海ちゃんだと思ってたんだけど」

私の勘は決して鋭いとは言えないけれど、日向と七海ちゃんはどこからどうみてもお似合いだと思っていた。だから、割りと自信があったのだが日向の反応からするとどうやら違うらしい。他に女の子で日向と仲がいい子が思い当たらない。

「じゃあ誰?友達のよしみで教えてよ」

私がそう言うと、日向は元々赤かった顔を更に赤くさせて

「……少しは自分で考えろよ、馬鹿」

そう言い捨ててから机に突っ伏してしまった。これでは話の続きが出来ないではないか。日向を揺すって起こそうとしたが、その時丁度チャイムの音が鳴った。そういえば今日はテストの日だった。狛枝のおかげで思い出したくせに、またすっかり忘れていた。

「テストの準備をしろ。カンニングだけはするなよ」

いつの間にか教室にいた担任の声でつい先程まで騒がしかった教室が静かになった。私も前を向いて、テストに向けて集中しなくては。








「テストどうだった?」

「全然駄目。集中出来なかった」

帰り道。今日は狛枝がいるから4人だ。私に質問してきたのは七海ちゃんだった。七海ちゃんは狛枝と同じクラスで私とは別のクラスだが、普段の授業は毎回寝てて、テストの時は開始から10分後には寝ているということは知っている。なのに毎回テストで良い点を取るから驚きだ。集中しなくてもテストが出来てしまうコツを是非とも教えて欲しいものだ。こっちは朝、日向が好きな子についてなんで頑なに教えてくれなかったのかを1人悶々と考えていてテストに集中が出来なかったというのに。…これはただの言い訳か。

「名前は今朝、ボクに言われてから今日がテストだって知ったんだから、出来なくてもしょうがないよ。今回赤点でも結局名前がちゃんと知らなかったのがいけないんだから」

私達より前を歩いていた狛枝にも会話が聞こえていたらしい。フォロー出来てないぞ狛枝。むしろ馬鹿にしているようにしか聞こえないのは多分わざとだ。

「私は文系は得意だから勉強しなくても平均以上は出せるし!」

「理数系は毎回全く奮わないよね」

「それは運だから!出てくる問題の!」

いつもの様に私と狛枝が言い合ってると横目でくすくすと笑っている七海ちゃんと―――目をあからさまに目をそらす日向が見えた。いつもならまたいつものかって七海ちゃんと笑っているのに。なんで今日は違うんだろう。まさか。私が朝言ったことが関係あるの?あのままずっと不機嫌そうだったし。
はっきりとは分からないけど、なんだろう、何か悪い予感がする。




T→



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