小さなお店
2011/08/08




本日も元気にナッツは営業中である。夜もピークを過ぎた頃、山本が珍しくやってきた。

「山本!」
「よっす」

シーズン中に来るのは珍しいのだ。前にチケットを貰って行った時獄寺は不機嫌そうにしていたが、山本のホームランを見た時には純粋に「すげえ」と言ったのを綱吉は笑顔で見ていた。
だが店で見る山本にはやはり不機嫌をあまり隠そうとはしない。綱吉はもう苦笑するが当の本人である山本は気にしてないらしい。

「何にする?」
「今日のツナのオススメで」
「じゃー…オムライスかな」
「ならそれで。ご飯大盛りな」
「わかってるよ」

そう言って綱吉は作り出す。フライパンに火をつけ油を軽く引き、冷蔵庫からみじん切りで炒めた鶏肉と玉葱を炒め直す。獄寺は仕事は仕事と割り切り卵を二つ割って溶いていく。

「そういや見たか?」
「なにを?」
「笹川先輩のやつ」
「見た見た。ポータブルのちっさいテレビ置いて店で見てた」
「ありかよ」
「ありだよ」

またお得意の身内の会話か、とぼんやり獄寺が思っていた。だが笹川とテレビという単語が出て来たのだ。どこかで聞いたと記憶を探れば一つ思いあたる節がある。

「笹川ってボクシングの笹川ですか?」

確か朝の情報番組だ。ボクシングで世界一を奪還したとか言っていたと獄寺は思い出した。

「そうそう。その笹川な」
「あの人ね、オレ達の中学と高校の先輩なんだ」

プロ野球の選手が綱吉の親友で、町全体が知る企業の代表取締役も先輩だという。今度はボクシングの選手だなんて本当にこの人の友人関係はどんなものなんだ。と獄寺は本気でそう思った。

「綱吉さんて、不思議ですよね」
「普通だけど?」

なんのことだと首をかしげる二十代半ば。最近じゃあ夜中ふらついていたら高校生に間違えられて補導されたという。
ご飯を入れて炒め終わり、ケチャップもあえてお皿に形作る。獄寺の溶いた卵に塩胡椒を入れてオムレツを作りそれをご飯に乗せれば完成だというわりと簡単な料理。それでも綱吉はこれが気に入っていたから山本に勧めたのだが。お盆に乗せて山本にどうぞと出せば嬉しそうにいただきますと手を合わせた。

「おばさんは?」
「さっきまでいたけどね、今ちょっと出てる」
「そっか」

ふうんと山本が相槌をうてばからんころんと音がしてドアが開いた。

「噂をすれば。いらっしゃいませー」
「いらっしゃいま、せ…」

ふふと笑う綱吉に目を丸くする獄寺。そんな二人につられて山本もカウンター席から誰だと覗けば、先程の噂の人物がそこにいた。もちろん店の客はざわめき出す。

「沢田!山本もいるではないか!」
「お久しぶりです」
「久しぶりっす」

キッチンから山本の隣にどうぞと促す。テンション高く座ってオーダーを綱吉が聞けば、元気よく焼肉定食と返された。

「さっき言ってたんですよ」
「そうそう。テレビ見てたんスよ」
「そうなのか!極限取り返したぞ!」

さすがにベルトを持って来てはいないが、ほれ。と携帯に写るベルトを見せてくれた。写真からでもボロボロだが嬉しそうな了平と大きなベルトがよくわかる。

「先輩、K.Oとはやったじゃないですか!」
「俺の渾身のアッパーが当たったのだ」
「おおっ!て言いましたもん。お客さんに見られたけど」
「そういや綱吉さんその次の日嬉しそうでしたよね」
「だって知り合いがチャンピオンだよ?嬉しいじゃん」
「そうやって応援してくれるのが俺には極限嬉しいぞ!」

わいわいと話す中、獄寺が呼ばれてお会計をしに行った。その間もかつての先輩後輩は他の客の注目の的となるのだが、三人は気にしてはいなかった。










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笹川了平 25歳
プロボクシングの選手。中学からこつこつと努力して努力が実ったスポーツマン。
中学より落ち着いて大人になったが、妹には少し心配性。骸みたいな悪い意味でなくイイ意味で。努力家で熱い男。むしろ漢。何事にも一生懸命で少し突っ走り過ぎるのは玉にきず。少しお馬鹿さんなのは皆さん許容範囲。意外と女性や子供に優しい人である。
山本、綱吉の先輩で雲雀の同級生。意見の食い違いで雲雀とは衝突したりとかもあったり。今ではお互いが成長したので殆どないが。
趣味が練習だったりするボクシング馬鹿。


やっと了平だせた!
京子ちゃんも迷ったけど
主要キャラ五人も捌ける程
わたしゃ器用じゃない←



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