小さなお店
2011/09/07




本日は土曜日。土曜日もナッツは昼も夜も営業している。この辺りの会社員達は休日返上なんのそので働いているのもあるし、寂れた通りとは言えカップルや家族連れが目新しくやって来るからだ。その為、いつもは二時過ぎくらいに昼は終えるが、少しばかり喫茶店も兼ねているここは休日は十一時から夜まで営業しっぱなしだ。
奈々はといえば同窓会があるとかで、昼間から先に友人達と合流すべく今日だけはいなかった。そんな日に限って忙しいものだが、その変わり獄寺とハルが出勤していた。

「日替わり三つっス!」
「はいよー」

獄寺ができるだけことだけをして後はウェイターに専念し、綱吉とハルは食事を作るのに専念していた。中にはハル目当ての客もいるので、それはハルが担当していたが。
食事を摂る客が落ち着いたのは三時前のことだった。後は近所の主婦達がお喋りに使っていたり、カップルが仲睦まじくのんびりしている程度だ。

「はひー、今日は一段と大変ですー」
「夜もこりゃ多いな」
「綱吉さんの勘、当たりますからね」
「いいんだか悪いんだか。二人とも、お昼遅くなってごめんねー」

そう言って二人をカウンター席に座らせ、喋りながら作っていたものを二人に渡す。ちなみに獄寺はサンドイッチ、ハルはコロッケ定食である。いただきますと食べだした二人を見ながら、自身も合間に作っていたおにぎりにかじりついた。

「いらっしゃっいませー」

からんころん。音がして入って来たのはかわいらしい女性客だった。

「ツナ君」

お久しぶりね。とでも言うかのような彼女はにっこりと笑って綱吉を見る。ぽろりと口に加えたご飯を綱吉は落とした。

「ツナさん汚いです!」
「ぬ、ああ、ごめん。一人?」
「うん」
「じゃあカウンター席どうぞ」

おなじくにっこりと微笑んで二人以外はいないカウンターへと促した。

「どうぞ。ご注文は?」
「えっとねー、ミルクティーのアイスで」
「かしこまりました」

ふふっと笑う二人はどこか懐かしさが漂っていた。従業員二人は食事をしつつ綱吉達を不思議そうに見ていた。
綱吉は綱吉であらかじめ作ってあるアイスティーの容器を冷蔵庫から取り出し、コップに氷を入れてそれを注ぐ。三分の二程度まで注いだらミルクを取り出して同じく注いだ。

「どうぞ。ガムシロップは?」
「一つで」

はい、コースターに乗せてとストローとガムシロップを手渡した。ありがとうと言って彼女はシロップを入れてくるくると掻き混ぜる。

「どしたの?珍しいね」
「お仕事で近くまで来たから寄ったの。土曜日だからあいてるだろうなーって」
「そうなんだ。お仕事大変?」
「ううん。どっちかって言えば楽しいかな」
「良かったじゃん」
「うん!」

和やかな空気に獄寺はまた知り合いか、なんて考えていたがハルは違った。彼女を凝視してうんうんと考えている。

「うっせーな」
「だって絶対私、あの人知ってますよ。見たことあります!」
「はあ?綱吉さんの知り合いが何でお前の知り合いなんだよ」
「知り合いじゃないです!あの人は私を知りません、多分」
「意味わかんねー」
「シャラップです獄寺さん!もうちょっと、あとちょっとで名前が…」

そこからもまたハルはうんうん唸りだした。獄寺は呆れた顔をして綱吉達に目をやった。山本が来た時と似てるようでどことなく違う。言い表すことは難しいがどことなく違う気がした。

「そういえばさ、少し前だけど了平さん来たよ」
「嬉しそうだったでしょ?」
「もの凄く。山本もいたんだけどさ、ベルトの写メ見せてもらったよ」
「山本君もいたんだ!ベルトね、うちに飾ってるわ。あの日お兄ちゃんすっごいボロボロになっちゃって私が泣いちゃった」
「ははっ、京子ちゃんらしいよ」

獄寺の隣で唸っていたハルがぴたりと止まった。獄寺も眉間にシワを寄せて何やら顔をしかめている。
ガバッと二人が綱吉達を見ればどうしたんだと綱吉も京子も目を丸くした。

「お兄ちゃん!?」
「笹川京子!?」







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うわあ、長くなったー…
もう少しだけ京子ちゃんの
くだりは続きます。



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