角砂糖いくつ分 ・・・ヤバい。 何がヤバいって、数字が。 お風呂上りに乗った体重計のモニターを見て、私は固まった。 ────────── 「カフェオレお願いします」 今日も今日とてポアロに顔を出す。しかし頼むのはカフェオレのみ──おやつ時はいつも甘いものを一緒に注文するが今回は違った。 飲み物だけでオーダーを終えた私に梓ちゃんが「あれ?」とでもいうようにこちらを見る。 「カフェオレだけでいいの?ケーキとかは?」 「今日は飲み物だけの気分なの」 少し困ったような笑みを浮かべた椿に梓は首を傾げながらも了承の意を返した。 しばらくしてカフェオレが運ばれてきて、一緒に添えてあったシロップを手に取る椿だが少し考えて机に戻す。 「ダイエット中ですか?」 「わ・・・あ、安室さん」 キッチンから身を乗り出してカウンター席に座る椿に声を掛けた安室。 椿が少し苦笑いを零して「まぁ」と曖昧に肯定すれば、梓は驚いたように「えっ」と声を零した。 「椿ちゃんダイエット中なの?」 「うーん・・・気持ち、ね」 「ここ最近甘いものを頼まなかったので気にしているのかと思いまして」 やっぱ鋭いなぁ、安室さん。なんでピンポイントでダイエットだと分かったんだろうか。 どちらかと言うと一週間に何度も通っているのだから懐が厳しくなってきたと考えるほうが自然だと思うけれど。 そう思いながらカフェオレを一口。うーん、コーヒーよりは甘く感じるけどやっぱ砂糖入れたい。 「食事時もカロリーの低そうなものを選ぶようになりましたしね。迷うこともあるようですが」 「あら、ばれちゃってる。食事時は混んでいるのに安室さんったらよく見ているのね。・・・びっくりするくらい細かいところまで」 一瞬だけピリついた空気。梓は気付かなかったようだ。 ふふ、と二人が小さく笑って、先に口を開いたのは椿だった。 「いくら探偵といえどデリカシーがないのはいけないわ」 「そうですね、無遠慮でした。すみません」 少し喉が渇いた気がしてまたカフェオレを一口飲む。 うん、甘いものが食べたくなる。帰りにゼロカロリーのゼリーでも買っていこうかなぁ。でもそういうのって砂糖の代わりに人工甘味料がたくさん使われていて、ダイエットには逆効果って聞いたことあるしなぁ。 「でも椿ちゃん、そんなに気にするほど?全然変わってないと思うわよ?」 「んー・・・でも二キロも増えていたの。放っておいたらあとで後悔するに決まってるわ」 「あ〜、確かに見た目が変わる前に対処しきゃよね」 そうそう。甘いもの控えるだけじゃなくて運動もしてるんだから。 ・・・体動かすと「運動したから食べてもいいや」って思っちゃうよね。あれの所為で中々痩せないんだと思うんだけど、どうしたらいいのか。 「一緒にダイエットしてくれる人がいたらライバル意識が出て早く痩せられるかも。梓ちゃん、一緒に体動かさない?」 「えっ、私そこまでスポーツ得意じゃないし・・・」 「じゃあ僕が付き合いましょうか?体動かすのも得意なので」 「やだ、飛んで火にいる夏の虫になるつもりはありませんよ」 「おや、どういう意味でしょう」 「安室さん甘やかしそうだから何かやるたびにご褒美のスイーツをくれそうだもの」 「それを言うなら『本末転倒』では?」 「うふふ、そうですね」 だって安室さん地味に私の事よく見てるじゃないですか。もちろん良い意味じゃなくて。 一緒にプライベート過ごすとか、何をどこまでやれるか見られそうで落ち着かないですよ。 [ back ] |