2 そろそろ季節の変わり目だからと新しい服を買いにターミナルビルに来た。 休日というだけあって人が多い。ずっと前に平日に利用した時はもっと空いていたんだけどなぁ。 ごった返した店内や道を歩いて疲れたため一度休憩をとろうとカフェに入る。運よく入れ替わりで席をとれたため、荷物を置いてオーダーのために列に並んだ。 「──抹茶ラテお願いします」 注文を終えて受け取りカウンターでラテを受け取る。 あぁ久しぶりだ。 テラス式の席につき、カップに口を付けてゆっくり傾ければ甘い抹茶が広がった。 これこれ。期間限定のも気になるけどやっぱり抹茶系は安定だ。 平和だなぁ。 刀剣達のことが心配だしこっち戻ってきてからは散々な事ばかりだったけど、でもやっぱり勝手が分かる世界で頼れる親も遊ぶ友人もいるこっちの方が良い。 ラテを飲みながら道行く人をボーっと観察する。 あ、仲の良いカップルだ。あのスーツの人は休日なのに仕事かなぁ。おぉ、両手にショップ袋してる人いる羨ましい。今剣と粟田口は浮いてるなぁ。あの家族は旅行か──あ? 今、いるはずのないものがいた気がする。 キャリーケースを引く家族から目を戻す。 「ぜんっぜんみつからないじゃないですかー」 「困りましたね・・・」 「もー、だから人の多い所はやめた方が良いって言ったのにー」 今剣、平野藤四郎、乱藤四郎。 年齢の割に明るい髪色が三つ、目を引いた。 何だあれ、見覚えある。超知ってる。なんで現代に馴染んでんだ。いや馴染みきれてない気はするけども。 なにやら困った様子の彼等は辺りを見渡しては顔を突き合わせていた。 どこの本丸の子か知らないけど何でこんな所にいるんだろう。まさかの時間逆行軍襲来?ここ危ない? しかし見た感じ刀は持っていないし、斬り合いをするような雰囲気でもない。 迷子だろうか・・・このターミナルビル広いし。困っているなら見て見ぬふりをするのもかわいそうだ。 飲み干したカップとバッグとショップ袋を持って席を立つ。 食器を片付けて少し急ぎ気味に外に出れば、短刀達はまだ同じ場所で話し合っていた。 「──君達大丈夫?何か困ってたら、お姉さん力になるよ?」 近付いてしゃがみ込み、顔の高さを合わせてから話しかければ彼等は驚いたようにこちらを振り向いた。 少し戸惑った様子で私を見て仲間内で顔を見合わせて、再び私に顔を向けると今剣が口を開く。 「あの、いっしょにきてたひとがいなくなってしまって・・・」 あぁ、やっぱり迷子か。いなくなってしまったのは君達だろうに──いや、こういう時は保護者組がいなくなったってことにした方が子ども達の不安が少ないって聞いたことがあるぞ。 仕方ない。一緒に探してあげるか。 一方的にとはいえ知ってる相手が、慣れない土地で迷子になってるのを放っておくわけにはいかないからね。 「誰を探してるのかな。名前と特徴は?」 名前だけ聞けば分かるけどフラグはへし折っておく。面倒事は御免だ。 さて、保護者は誰かな。私としては太郎太刀とか次郎太刀とか蜥蜴切とか歌仙とか、話が分かりそうな穏やかで親しみやすい人希望なんけど。 「さんにんいるんです。なまえは、えっと、陸奥守吉行さんと」 「土佐弁を話す新しいもの好きな方です」 話が分かりそうで── 「髭切さんと」 「淡い金髪でおっとりしてるよ!」 穏やかで── 「ぎんぱつでおどろかすのがすきな鶴丸国永さんです!」 親しみやすい人── 違う、そうじゃない。 いや間違ってはないんだけど。 誰だこの人選した奴。ここが何処か分かって送り込んできてんのか。 マジで今剣が言う通り奴等が迷子だった。 しかもそのメンバーとなると三人一緒にいるとは思えない。絶対バラバラで各々好きに徘徊してるだろ。 そして私は思った。 あ、これは私の手には負えないわ──と。 結論を出した私の行動は早かった。 三人を連れて総合案内センターへ行き、お姉さんに「この子達の連れがいなくなった」と引き渡す。 探している奴等の名前は言うべきか迷ったが、どの道探すのに必要だろうし刀の名前なんて知ってる人はそういないと考えて先程聞いた特徴と共に伝えた。 「このお姉さんに任せておけば三人を見つけてくれるからね」 そう子ども達に話して、スタッフさんには「ではお願いします」と声を掛けて、そそくさとその場を去る。 声を掛けた時は一緒に探そうと思っていたけど相手があの三人となれば話は別ってことで。 だって一日中探し回ったところで全員見つけられる気がしない。 それか、一人目見つけて二人目見つけて、そして三人目を見つける頃には初めに見つけた奴が再び行方不明になってる、なんてこともありえる。 少し早い帰りの電車に乗るため改札に行くと、見たことあるような髪が跳ねた男が興奮気味に土佐弁で駅員と話していた。 どうやら電車がどんなものか聞いているらしい・・・人違いだ帰ろう。 そういえば結局あの子達は何をしに来たんだろ。 [ back ] |