捜索記 | ナノ

8-1

真夏の猛暑がなりを潜めた今日この頃。
それでもジワリと滲む残暑に扇風機を回してダラダラと過ごしていた。
テレビを見ていると記録的猛暑のニュースから変わって度々来る台風が番組を賑わせている。

お昼を食べ終わってしばらく、アイスを楽しみながらこの地方の出来事やイベントを紹介する番組を見ていると、外を歩くリポーターがイベントでにぎわう広場のリポートをしていた。

次は誰かにインタビューしますねと言ったところで一旦中継が終わり、しばらく他の話題で盛り上がったところで再びイベント事の話になって司会者がリポーターを呼ぶ。
元気な声で「はーい!」と声と共に画面が賑やかな風景に移り変わった。

思わず持っていたアイスを落としそうになった。

「相変わらず凄い人です!ご覧の通り地方の珍しいグルメのお店が出店しているので、皆さん楽しんでいるようです。さて、そんな中でですね、とってもイケメンな男の子がいらっしゃいました。
 お二人共楽しんでいるところありがとうございます」
「良いよ。てれびって興味あったし」
「ねぇ清光、今これ僕達映ってるのかな」

お前等なんでテレビ出演しちゃってるんだよガッツリ現代に染まってきてんじゃねぇか。

相も変わらず現代都会っ子スタイルが馴染んでいる加州と大和守が興味深そうな様子でテレビに映っている。
学生ですかという質問に「いや、歴史を守るために戦ってる」と馬鹿正直に答えるのを見て顔を覆って天井を仰いだ。

あいつ等テレビが何か分かってんのかな。本丸にテレビってあったっけな・・・いやウチにはなかった。他の本丸にはあるのかもしれないけど。
でも二人共カメラとかマイクとかをすごく珍しそうに見てるからやっぱり分かってないのかもしれない。

家にいるのに巻き込まれてる感が半端ないのは何故だろう。
画面に目を戻すと「今日は何を目的にいらっしゃったんですか?」とリポーターが尋ねたところだった。
「ある人を探しにきた」と言う大和守だが違うそうじゃない。
イベントの何を楽しみに来たのかって聞いてるんだよ。

リポーターも大いに戸惑っているようで方向修正をしようと試みるが、二人が勝手に話を進めるために止まらない。
頼むから会話してあげて。リポーターの女の子が可哀想だよ。
あ、早々に方向修正を諦めてさっさと収束させる方向に変えた。

「えーっと、では最後にカメラに呼びかけてみてはどうでしょう。もしかしたら探している人がテレビを見ているかもしれませんし・・・」

苦笑い気味にまとめるリポーター。その言葉にハッとした様子の二人。
次の瞬間には加州がカメラをグッと自分の方に向けていた。

「ねぇ主見てる!?俺だよ!主の加州清光だよ!政府から特別に許可が下りて迎えにきたんだ。でも探しても探しても見つからないし・・・一体どこにいるのさ!この辺に住んでるって聞いたのに!」
「落ち着いてよ清光。
 えっと、主、見てるかな。みんなで探してるよ。もし見てたら大きい駅とか商業施設に来てほしいな。人の多い所に行くようにしてるから誰かしらと会えると思うんだ」

加州をカメラから離した大和守が、しかし身を乗り出すようにして食い気味に話す。
うーん、この時間ってテレビ見てる人多いのかな。私と同い年ってことはまだ若いから友達と出かけてたり携帯いじってるかもしれないし、確率としては高いとは言えないよなぁ。

「俺の事見ててくれるんじゃなかったの!?爪紅の約束だってしたじゃん!ねぇ俺のこと嫌いになったの?俺が弱いから?鬱陶しかったから?我儘だから?ねぇ駄目なところあったら直すから帰ってきてよ!」
「ちょっと泣かないでよそういう所だよきっと」

確かに面倒なところあるけどさ、大和守・・・今の状態の加州には言っちゃいけないと思います。
その言葉に加州はグッと言葉を呑むが、少し目を彷徨わせて今度はキッとカメラを睨んだ。

「いいし!主が来ないなら俺が見つけるし!絶対探し出すから!どこにいても会いに行くし逃げても追いかけるから!勢い余って隠しちゃっても文句言わないでね!」

いやそれは駄目だと思う。
何でそんなに鬼気迫ってるの。審神者さん今すぐ逃げて超逃げて。

これあれだよ。気付いたら「今貴方の後ろにいるの」って状態になってるやつだよ。
おめでとう加州は付喪神からメリーさんに進化していた。
いや意思を持った"物"繋がりで割と似てるかもというか寧ろ同類じゃなかろうか。

「主大好きだよ!すぐに迎えに行くから待っててね!」
「あーもう、煩いってば」
「は、はい!そんな感じなので、主?さん?これを見ていたら彼等に会いに行ってあげてくださいね!一旦スタジオに戻しまーす」

無理矢理終わらせた感しかない中で画面が収録スタジオに変わった。
彼等の審神者さんが心配でしょうがないこの心境をどうしてくれようか。
にしてもやっぱり同じ刀剣男士でも個体差ってあるんだな。私の知ってる加州は少しオドオドしてて人の顔色を窺うような子だったし。

食べ終わったアイスの棒を捨てて水を飲む。
アイス食べたばかりだけどさっき特集してたからか和菓子食べたくなってきた。
そういや駅ビルに有名和菓子店の喫茶店舗が入ってたな・・・今度食べに行こう。

そう決めたところでピンポーンと間の抜けた音が部屋に響いた。

普段鳴ることの少ないチャイムに肩をビクつかせて、何か来る予定あったっけと考える。
が、通販を頼んだ記憶はないし人が来る予定もない。勧誘か何かだろうか珍しい。
会社が家賃の一部を負担してくれて住んでいるこのマンションは中々いいところで、エントランスにオートロックが付いている。
一度目のチャイムはエントランスからのはずだからカメラをチェックして知らない人だったら居留守を使おう。

インターフォンの画面に映っている訪問者を見る。
さて、誰ですか・・・、・・・え。
動きが止まった。
エントランスが映るかと思ったが景色からしたらどうやら玄関先のようで、しかもそこに移っていたのは想定外の者達だった。


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