捜索記 | ナノ

7-1

夏真っ盛り。
暑いからと部屋でへばっていた私の元に送られたラインを開けば、学生時代の友人からだった。

要約するに『男と出会いたい。プール行こうぜ!』とのこと。
出会い期待するなら海じゃないの?と返すと、海は塩で汚れるし綺麗な所が近くにないから無理だと。

次の休みに二人で行こうと言われたが、友人はどちらかというと胸が大きくて可愛い部類に入る子だ。
スポーティーな私は引き立て役ですね、分かります。
まぁ彼女はそんなことを考えて人を選ぶような子じゃないから構わないけども。

最近どこ行っても奴等がいて面倒事に巻き込まれるから、ちょっとこの辺でパーッと遊んでもいいかもしれない。
車で少し走ったところにある大きい施設だから思いっきり楽しもう。

──────────

という事でやってきましたプールです。
ちゃちゃっと着替えて浮き輪を借りてしばらく遊んでいたが、待てど暮らせどナンパはない。
周りを見れば女友達同士か家族連れか・・・カップルか。
年頃の男グループも時々いるが声を掛けてくる人はいない。

それでも楽しく遊んでお昼も食べてまた遊んで、少し疲れたから休憩しようかという話になった。
何か食べたいと思い友人に先に休憩スペースに戻るよう伝えて店に向かう。
こういう大きい施設だとプールの施設内にお店も出ているから便利でありがたい。

中途半端な時間だからかお店は空いていて、店内には数人の客がいる程度だった。
何食べよう。かき氷いいなぁ。タピオカドリンクも惹かれるしアイスクリームも捨てがたい。
でも休憩スペースに持っていくことを考えると溶けないのが良いよね。よし、タピオカミルクティーにしよう。
あ、フライドポテトも食べたいな。

「すみませーん!」
「おっ、客じゃ。──らっしゃい!」

奥で作業をしていた店員さんがやけに元気な声を上げてこちらに出てくる。
何か聞き覚えあるなぁなんて思ったが、その顔を見たところで思わずカウンターに頭をぶつけたくなる衝動に駆られた。

「ん?どうしたが?」
「あ、あー、いや。えっと、タピオカミルクティーと・・・フライドポテトお願いします。持ち帰りで」

いやお前がどうしたよ陸奥守。
バイトか。バイトなのか。超エンジョイしてんじゃねぇかよ。
思わずジト目になってしまった私に陸奥守が首を傾げたため急いで注文してお金を払う。
「ちっくと待っちょって」と愛想よく言った彼は店の奥を振り向いて口元に手を添えた。

「おおい、鶴丸!ふらいどぽてと頼むぜよ!」
「おう任せろ!驚きのふらいどぽてとを提供するぜ!」
「おい嘘だろ」

ひょっこり顔を出した鶴丸に思わず真顔で呟いた。
混ぜるな危険コンビだよ。相乗効果で何しでかすか分かったもんじゃない。
というかなんでこんな所にいるんだ。せっかく一日平和に遊べると思ってたのに・・・。

レジから少しずれて待つが思わず両の手で顔を覆ってこっそり溜め息を付く。
まともな食べ物出てくるのかな・・・鶴丸の奴が驚きのフライドポテトとか言ってたけど頼むから安全で美味しいものを提供してほしい。

「なぁお嬢ちゃん、今日はどこから来たんだ?」

声を掛けられてカウンターを見れば鶴丸が肘をついてこちらを見ていた。
え、フライドポテトは?
そう思ったけど下手に応戦するよりさっさと答えて切り上げさせた方が早そうなため素直に県と市まで教えてやった。ら、今度は年は?という質問。

「──お待ちどうさん、たぴおかみるくてぃーじゃ」
「あ、どうも」

なんだ。なんだかんだちゃんと人探ししてるのか。社会勉強とかいう名目でエンジョイしてんのかと思ったけど意外と真面目だな。
だがしかしさっさとポテトを用意してほしい。ドリンクはもう出来たぞ。私はお前等の人探しよりタピオカとポテトの方が大事なんだ。

「まぁそう焦らなくてもふらいどぽてとは逃げ「鶴丸!油が跳ねちゅう!」やべっ」
「おい私のポテト」

そういや本丸でもアイツ揚げ物してて失敗したんだよな・・・まさかこの鶴丸も水を入れたりなんてこと。
冗談事では済まない嫌な予感がよぎったところで、鶴丸がポテトの入った揚げカゴを油から上げて温度を落とした。
やっぱそうだよね水入れるとかあの鶴丸だけだよね。全員が全員そんな自殺行為するような奴じゃなくて良かった。

「私のポテト無事ー?」
「・・・おう!」
「おい」
「こればぁなんちゃーがやないやか」

数秒ポテトを見た後、こちらを向いてまた数秒。親指を立てて良い笑顔で頷いた鶴丸に思わず突っ込む。
今の反応絶対無事じゃないだろ。
陸奥守が大丈夫だと言ったからそう酷くはないのかもしれないけれど。

「まぁちょっとくらい良いけどさ。火傷とかしてない?」
「ちと飛んできたが大丈夫だぜ。それに前に揚げ物やってて痛い目見てるからな。そこら辺は学習しているさ」

コイツもなんかやらかしたのかな。まぁ親が料理してる姿を見たとかの事前知識がない彼等が揚げ物なんて始めたら多少の火傷なんかは日常茶飯事か。
ウチの鶴丸の厨爆発事件を超えるものは中々ないだろうけどな。
思わず手を合わせて合掌してしまったが、そうしている内にも案外慣れた手つきで紙袋にポテトを入れた鶴丸が手渡してくる。

「待たせたな、ほれ」
「どうも」
「・・・うーん」

ポテトが無事か確かめようかそれともここでやるのは失礼かと考えていたところ、鶴丸にじっと見られていることに気付いて顔を上げた。
珍しく真顔な彼に首を傾げる。

「(いろいろ条件が当てはまっていたし俺と陸奥守の会話にも違和感なく合いの手を入れていたから当たりだと思ったんだけどなぁ。揚げ物で痛い目見たって話に反応なかったしそもそも俺達のこと知ってる様子はないし、はずれだったか・・・)」
「あの、なにか」
「あぁいや!何でもないさ」

手を振って否定した鶴丸に疑問を持つも、追及する前に「あ、いたいた」と聞き覚えのある声が聞こえて振り返る。
休憩スペースにいるはずの友人がお店に入ってきていた。
遅かったから見に来てくれたのかな。

「あのね、休憩してたらナンパされちゃった!」
「え」


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