6-2 二人と別れてから近くのビルで少し買い物をした。 手に下げたショップ袋に満足して、そういえば歩き回って喉が渇いたなぁと辺りを見渡す。 カフェがあるけど一杯五百円以上はするからちょっとな・・・また自販機探すか。 ウロウロ歩いて休憩スペースのようなところで自販機を発見。 先客がいたがそう時間はかからないだろうと、水でも買って飲みながら帰ろうと思って足を向けた。 しかし見つけた時からいた先客は私が自販機に到着してもまだ買えずにもだもだと戸惑っている様子。 もしかして故障か補充待ちかだろうか。 「あの、この自販機今使えない感じですか?」 控えめに声を掛ければビクリと肩を震わせてこちらを振り返る。 あっ、イケメン・・・。 驚かせてしまって申し訳ない。けどそんなにビックリしなくてもいいと思うんだ。 「えっ、と、いやそうじゃねぇけどさ。・・・あー、先いいぜ」 「はぁ・・・ありがとうございます」 何買おうか迷ってただけかな。だとしたら急かすなんて失礼な事をしてしまった。 というかイケメンのくせに性格控えめだな。 いや私の見てきたイケメンどもが自己主張の強い奴ばかりだったからそう感じるだけか? 申し訳ないと思いながら場所を変わってもらって財布から小銭を出す。 丁度の金額があったことに地味に嬉しくなりながら投入口に入れようとしたのだが、そこで投入金額の表示がされる画面が目に入って動きを止めた。 出した小銭を手に持ったまま返金のレバーを下ろせばカランと音を立てて二枚返ってくる。 「あの、二十円入ってたんですけど・・・」 「あっ、悪ィ」 謝罪と礼を言って受け取った彼と目が合う。 茶髪で長身。うーん、今時のイケメンだ。久しぶりに素直に格好良いと思える人に会ったかもしれない。 さっき太郎太刀達と会ったから、雰囲気とか服装とか含めて余計そう思うのかも。 でもこのイケメン、どっかで会ったことあるようなないような気が・・・別の部署とか取引先とかかなぁ。 「えっと、失礼ですがどこかで会ったことあります?あっ、いやナンパじゃないんですけど」 「えっ、俺とか?うーん、ないと思うぜ。ここ来たの初めてだし・・・」 そっか、知り合いじゃないとなると・・・モデルさんとかかな。テレビとか雑誌で見たことがあるのかもしれない。 有名人ならサイン欲しいなぁ。いやでも『貴方の事見たことあるようなないような程度にしか知りませんよ』って言っちゃったようなもんだし、ここでサインをねだるのは流石に失礼だ。 素直に謝って、今度こそ自販機にお金を入れて水のボタンを押す。 出てきたペットボトルを手によし帰ろうと振り返れば彼がその様子を覗き込んでいたようで、びっくりして思わず後ずさった。 「あの、何か・・・?」 「あっ、いや、何でもない!」 慌てて両の手を振ったイケメンに首を傾げるも、まぁ何もないと言うなら何もないのだろう。 軽く頭を下げて彼と別れた。 うーん、やっぱりテレビとかじゃなくて、実際にどこかで会ったことがあるような気がするんだよなぁ・・・。 「(あぁやって買うのか)」 残されたイケメン──もとい槍の刀剣男士、御手杵。 自販機を見つけて他の客の様子から飲み物を買う機械だと理解するも、買い方が分からなくて困っていたところで彼女が声を掛けてきたのだ。 「(飲み物も買えたし、そろそろ蜻蛉切と太郎太刀を探しに行くかぁ)」 手に取ったペットボトルの蓋を開けて飲みながら、彼は下に降りる階段を探し始めた。 [ back ] |