本丸記 | ナノ

部屋と部屋の仕切りが外された大広間、刀剣達が全員集まってとある会議が行われていた。

「ここ最近主の様子がおかしいのは皆分かっているだろう。重傷者は直されてむちゃくちゃな出陣はなくなった。良い事ではあるが僕は何かあるのではないかと懸念している。
 ・・・この先何が起こるのか全く分からないが、被害を最小限に抑えるために皆の意見を聞いて対策が出来るならばしておきたい」

皆の前に座って話すのはこの会議の発案者である歌仙だ。因みに二振目で、初期刀である前の歌仙が折れてすぐ顕現されたらしい。
そんな彼の声掛けで集まった刀剣達は不安げにそれぞれ顔を見合わせた。問題はそう、数日前からガラリと変わった彼等の主である。
少し前まで出陣出陣出陣。怪我をしても手入れなどろくにされず、特にレア度が低く能力の低い打刀以下は使い捨てのような感覚だった。
それが今はどうだ。久々に人らしい暮らしを許されており日に日に減っていく怪我人の数。

「対策も何も、向こうが態度を軟化させて何かを企んでいるならばそれを利用して真名を掴んでしまえば良いのでは?」
「部屋に忍び込んで探してくるか?」

物騒なことを言う宗三とそれに乗っかる和泉守。しかしそれを止めたのは主に忠実に使える長谷部だった。
「主に危害を加えようなど言語道断」と言い切る彼だが、しかしその特性故に本丸の現状も己の主の非道さもきっちり把握しているため表情は暗い。

「長谷部殿、あのお方が主として相応しくないのは貴方もよくよくお分かりでしょう。我々が審神者を主と仰ぎ命を受けて歴史修正主義者と戦うのが務めなら、審神者は使役する我々を正しく扱う義務があると思うのですが」
「君は弟達がよく被害にあっていたから一等恨みが募っているんだろうね。かく言う俺もよく役立たずと自慢の髪を切られていたから物申したい気持ちはあるけど。・・・本当、真作に対する扱いじゃないよ」

顔を顰めて己の髪を撫でる蜂須賀。
そんなこんなで各々が不満を零す中、険しい顔で立ち上がったのは現在審神者の一番近くにいる今剣だった。

「みなさんしいたげられてうらみつらみをいいたくなるのはわかりますが、ぼくたちはあるじさまのかたななのです!あるじさまがかわったのなら、ぼくたちもしたがうべきではないですか!?」
「今剣はやけに主の肩を持つね。そういえば長谷部と近侍を変わったのも主が急に僕達の手入れをすると言い出した日だ。何か知っているのかい?」

ここ最近の今剣の行動を思い返した歌仙が訝しげに問えば、口止めをされている彼は言葉を濁して目をそらす。
その言動が皆の注意を引いたようで更に追及されて、最初の勢いは完全に消えた。

「だから、その、ぼくは・・・」
「今剣、皆この状況が把握できなくて不安なんだ。何か知っているなら教えてほしい」
「・・・ごめん、なさい」

石切丸に優しく諭されて揺れるも最後には俯いて小さく謝罪を口にする今剣。知っているが教えられないというその答えに各々が顔を見合わせた。
中には今剣に対する不信感を表すものもいて、このままでは今剣を信じる者と信用できない者とで刀剣達が割れる可能性が出てきたと主催者である歌仙は顔を顰める。
険悪な雰囲気になる前に今日はお開きにした方がいいかと全員を見渡して口を開いた。

「みんな落ち着け!この状況で仲間割れしてどうする。彼が話してくれないなら他の方法で確かめたらいいだけだろう。・・・こんな雰囲気じゃ冷静な話し合いは出来ないだろうから、今日はこの辺で仕舞にするよ」
「そうだね、みんな一旦頭を冷やそう」

お開きの言葉にまだ納得していないと難色を示すものも数名いたが、燭台切が歌仙に味方したことで解散の空気が広がり第一回目の集まりはこれで仕舞いとなった。


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