「えっ、と、えっと、取り敢えず手当てをっ、と言うか病院!あ、付喪神だから刀を手入れすればいいんだった?あーもうどうしたらいいのさ!ねぇキミ付喪神で間違いない!?手入れしたらその怪我治る!?」 「あの、あの、あるじさま・・・」 オロオロと右往左往する私に釣られたのかベージュがかった銀髪の幼い子もどうしたら良いか分からないといったように言葉を零す。 もー、私だってこんな大怪我した人の対応なんてしたことないんだから。助けてほしいのはこっちだよぅ。 「答えて!」 「っなおり、ます。ぼく、とうけんだんしですから・・・」 良かった治るって!すぐに部屋戻って手入れしよ! ちょっとごめんねと断りを入れてその子を抱っこ。審神者の部屋に向けて走り出す。 あー手入れの道具ってどこにあるんだろ。朝物色した時はなかったと思うんだけどなぁ。物置っぽい部屋に置いてあるのかな。 「ね、手入れの道具ってどこあるか分かる?」 「ていれどうぐ・・・あの、あるじさまどうしたのですか?ていれなら、その・・・ていれべやにいくのではないのですか?」 「手入れ部屋?専用の部屋があるの?教えて!」 二階へ上がる階段に一歩踏み出したところでなんと手入れをする部屋があると判明し、素早く方向転換。戸惑うこの子には悪いが事は一刻を争う大怪我。少々強引にナビゲーションをしてもらい、無事"手入れ部屋"と書かれた戸の前に到着した。 中に入ればなるほど手入れ道具一式が入ってそうな箱が置いてある。ついでに付喪神を寝かせるためであろう布団も隅に畳んであった。 取り敢えずその布団を出す時間も惜しいため申し訳ないがそこら辺に置いてあった座布団を枕に抱いていた子を床に寝かせる。 「じゃあ手入れするから刀借りるよ」 「あ、はい・・・」 了承を得てから腰に挿していた刀を一式取ろうとしたら自分から外して渡してくれた。この子怪我酷いけど結構動けるよね。神だからですか。 お礼を言って受け取って・・・おっと道具を忘れていた。箱を取りにいって改めて刀と道具を並べて、いざ手入れのお時間です。 「・・・・・おおう、マジか」 や、例の冊子に刀剣男士の怪我は本体である刀を手入れすれば治るって書いてあったから便利だなぁと思ったよ?手入れの仕方は知ってるし家に置いてある刀で実際にやってたし。これなら私でも務まるじゃんって。 ただねぇ・・・うん、ボロボロに刃こぼれして所々ヒビまで入ってるとは思わなかったなぁ・・・。 もしかして結構ヤバい状態だったりする、のかな。 「どうしよ、これは流石に・・・私じゃどうしようもないんだけど・・・ごめっ、どうしよ・・・」 「・・・そこに、"よりしろ"があります。それにちからをそそいでください」 動揺していた私に控えめに助言をくれた少年。指差した方を見てみれば神棚に置いてある数枚の人型の依代があった。 手に取ってみるが力を注ぐってどうしたら良いんだ。えー、えー、いやでもやるしかないよねこの状況。中身は一般人だけど体は能力のある審神者さんだし頑張ればできるはずだ。 ということでフンと気合を入れる感じで力を入れてみる。・・・何も起きない。 今度は体に力を入れてじんわり手に持つ依代に伝わるように念じてみる。・・・何も起きない。 取り敢えず伝われー伝われーと念じてみる。・・・これも駄目か。 え、これ大丈夫か。中身変わったから出来ないとかないよね? そう四苦八苦して何回目か。そろそろ集中力が切れそうになったところでようやく成功したらしい。 依代がぴくぴく動いたかと思ったら手からハラリと落ちて床に小人達が立っていた。 こちらを見て手を出したため急いで刀と手入れ道具を献上する。 「あ、あの、これ結構ヤバいと思うんだけど本当に直る?」 コクコク。小人達は喋れないのかこちらを向いて任せてとばかりに大きく頷いてくれる。 そっか、直るのか・・・よかった。 刀の状態を確認して顔を見合わせた小人達が傍にあったタイマーを操作する。ここに表示した時間が掛かるってことかな。 さてさて結構騒いだ気がするけど奇跡的にここに住んでいるであろう付喪神達には気付かれていないらしい。広い家って凄い。 ということで手入れが終わるまで私もここで待機だな。余計な危険は犯すまい。 ようやくホッと息を吐けたところで、不意にこちらを見つめる赤い瞳と視線が交わった。 ・・・あ、私今ここの主だった。すっかり忘れてたよ完全に素だったじゃん。うーわーしくった。いやでも仕方ないよね大怪我負ってる子がいたんだし。ワタシワルクナイ。 [ back ] |