本丸記 | ナノ

皆様おはようございます。突然ですが朝起きたら古き良き日本家屋的な部屋にいたのですが、これは一体何事でしょうか。

「どこだここ・・・」

部屋を見回して思わず呟いてしまった疑問が中々に広い部屋に溶けて消える。
昨日は普通にお風呂に入って普通にご飯を食べて普通にネットやって、眠くなってきたからベッドに入っただけだ。
それが起きたらベッドから布団に、フローリングの狭い部屋から広々とした畳の部屋に大変身。これなんていうトリップ?

いや、確かに小学生の時にハマったアニメに影響されて武術関連はいろいろやってきたし、借りてたマンションの部屋もちょっといじって和風な感じにしてたけどさ。
憧れが拗れてとうとう幻覚でも見るようになったか。成人を越えて独り立ちもしたというのに精神年齢が小学生の時のままだなんて・・・。
己の残念さに酷く悲しさを覚えて頭を抱える。と、俯いた拍子に肩に掛かっていた髪がはらりと落ちた。

アレ、オカシイナ・・・私ショートヘアだったはずなんだけど。視界に移る髪は手に取れるほどに長くサラサラと揺れている。
驚いて思考が一瞬止まるも、弾かれるように先程部屋を見渡した時に見つけた化粧台に駆け寄った。一呼吸おいて覚悟を決めると恐る恐る鏡を覗き込んだ、ら。

「ヒッ」

少し年下くらいの気の強そうな、すっぴんでも中々綺麗な顔立ちの女と目が合った。・・・目が合った。

ハッキリ言おう。私は可愛くも美人でもなかった。一応二重だったし多少筋肉質のスリム体型だったけど、何分アニメキャラに憧れた武闘少女なものだから少々男っぽいというか、そう、見た目に無頓着なところがあったのだ。

それが今鏡に映った自分はどうだ。サラツヤの髪にプルプルの肌──これぞ ザ・女の子!

一夜にして姿かたちが変わるなんて気持ち悪いとは思うが私だって女の子だ。やり方すら分からなくて叶わなかったが、可愛く着飾ってショッピング行ってみたいという夢があった。
だからこの顔にメイクしてお洒落して遊びに出かけられたら絶対楽しいだろうなんて思ってしまう。

「・・・いかんいかん。現状把握をしなくては」

十二分に顔を眺めてから部屋を物色するべく立ち上がる。まず確認したのは時間だ。現在時刻五時十二分──空の色を見るに朝か。ちなみに窓から覗き見た外には本当に日本家屋よろしく広い庭やら縁側やら塀やらが見えた。なんてこったい。

見なかった事にしようと気を取り直して箪笥や押入れを漁ってみる。しばらく探索して最後に品の良い棚を探っていたところ、奥に押し込まれてもう読まれないであろう気になる冊子達を見つけた。

『審神者の手引き』
『審神者マニュアル』
『本丸運営の基礎知識』
等々・・・

「何だこれ。というか何の手引き?これなんて読むの?」

"審神者"なんて読めないでしょ。え、これ私の頭が劣ってるの?
まぁいっかそんな事より次だ次。こんな広い屋敷に私一人なんてことはないだろうから、まだ他の人達が起きてこないうちに何が起こったか把握しなくては。
ってことで机の上に鎮座した、この立派な日本家屋には似合わない文明の利器・パソコンのスイッチをオン。いつの時代でも私の見方ですね。

「んーんー・・・お、このアプリいいんじゃない?」

関連のありそうなアイコンをダブルクリックで起動するとこれがビンゴ。更なる情報をとメニュー画面から報告書と書かれた文字をポチッ。

こちらから送られたらしい報告書の履歴をザッと読んだところ薄っすらここの人達が何をやっているかが分かってきた。
どうやら"私"は"刀剣男士"なるものに指令を出して"歴史修正主義者"とやらを倒す仕事(?)をしているらしい。・・・ナルホドワカラン。

ますます首を捻る結果となり、しかしそういえばこれらについて書かれていそうな冊子をさっき見つけたなと思い出す。そしてそれを読むことにしようと立ち上がった──その時。

「失礼します、主。朝餉をお持ちいたしました」

襖の外から掛かった声に、飛び上がるほど驚いて硬直した。


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